186
奇妙斎が呆れる。
信虎の首がはねられた瞬間、死人侍たちの動きが明らかに鈍くなった。
その隙を見逃さず、無法丸が自分と戦っていた二人をあっという間に斬り倒し、奇妙斎の相手の二人の首もはねた。
静香も相対する二人を瞬殺し、隼人を押さえ込んでいた首なしの信虎へと猛進する。
信虎の身体を怒りに任せ、静香が八つ裂きに斬り刻む。
隼人は信虎の刀から解放され、立ち上がった。
信虎の首と斬り刻まれた身体は黒煙に形を変え、一ヶ所へと集まった。
渦を巻き、再び元の信虎の姿に戻る。
静香が信虎の前に立つ。
「お前たちは本気で、わしに勝てると思っておるのか?」
信虎が言った。
静香が無言で、信虎の首をはねる。
首はすぐに煙となって、また身体へと再生した。
静香が、もう一度、斬る。
やはり結果は同じだ。
「おのれっ!!」
静香が激昂した。
「馬鹿者どもめが!!」
信虎が笑った。
「わしは鬼道城を一夜で修復するほどの魔力を持っておるのだぞ! この世では、わしは不死身! 天地がひっくり返ろうともお前たちに、わしは殺せぬわ!!」
さすがに信虎のあまりの魔物ぶりに、その場の全員が凍りついたように押し黙った。
異界の軍による日の本統一を阻止したというのに、肝心の諸悪の根源を倒せないとは。
大笑する信虎の後方に異変が起こったのは、そのときであった。