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信虎の右肩から、またしても甲虫の脚が飛び出した。
三本の脚は重なり、強固な盾となって、隼人の斬撃を受ける。
二本の脚の先端が黒い血を撒き散らし、斬り落とされた。
しかし、最後の一本が、ぎりぎりのところまで斬り込まれながらも攻撃を受け止めきった。
「ちっ!!」
隼人の顔が曇る。
信虎の左肩から生えた三本の甲虫脚が隼人へ飛んだ。
空中で身体をひねり、隼人が紙一重でかわす。
着地した隼人に信虎の刀が斬りつけた。
隼人の刀が、それを受ける。
が。
信虎の異常な膂力。
蛇美羅の比ではない。
隼人は、あっという間にひざまずき、上から押さえつけられた。
そのまま、ぐいぐいと潰されそうになる。
「「隼人!!」」
友の危機に蜜柑と春馬が、堪らず飛び出した。
蜜柑の両眼が銀色に輝く。
この広間に入ったときは見当たらなかった霊が、今は居た。
蜜柑の頭上で白い煙が、たゆたう。
春馬は「エレメントシェル」を信虎に投げつけた。