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人ならざる者の異常な妖気が信虎の全身から、どっとあふれ出し、隼人の顔を暴風の如く打つ。
常人であれば数秒とて耐えられぬであろう、その殺気。
だが、刮目して見よ。
美剣隼人の顔を。
笑っている。
この少年は笑っている。
楽しくて、堪らないというふうに笑っているのだ。
両脚を開き、腰を落とし、両腕を交差させ二刀の柄を握る。
ぺろりと唇を舐めた。
「来いっ!! 化け物っ!!」と隼人。
「殺してやる!!」
信虎が怒鳴りつつ、前に出る。
「俺流、バツ斬り!!」
隼人の二刀が疾った。
信虎の刀が、両刀が交差するのを受ける。
隼人の左手に持った刀が真ん中ほどで、へし折れた。
瞬間。
隼人が右手の刀を翻し、上へと跳んだ。
身体を横回転させ、その勢いを加えた一刀を信虎の顔面に叩き込む。
「俺流、一刀旋刃!!」
神速の必殺の一撃。
このままいけば、信虎の頭は横に真っ二つに断ち割れる。
だが。