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信虎の口から苦悶の大絶叫が、あふれだした。
その場に倒れ、のたうち回る。
「な、何だ、これは!? ど、どういうことだ!?」
信虎の身体から出る、黒い煙の勢いは、さらに増していく。
「何故だ!? 何故、こんな物がここに!?」
信虎が、はっとなる。
「奴か!? また、奴の仕業か!? 女剣士だけではなかったのか、奴の邪魔は!?」
そこまで言うと信虎は、仰向けで動かなくなった。
一方、身体から出た黒煙は、ひとかたまりとなって渦巻いたが、やがてそれが元々の姿、狂虎の容姿に変化していく。
狂虎、いや信虎は顔を真っ青にし、ぜぇぜぇと苦しげに肩で息をしている。
身体から「魔祓いの石」の効果により、信虎が出ていった竜丸が「うーん」と声をあげた。
これに、いち早く気づいた夜叉姫は涙を散らし、竜丸の元へと駆け寄った。
「竜丸!! しっかりせよ、竜丸!!」
必死に竜丸に呼びかける。
竜丸が閉じていた眼を開き、身体を起こした。