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巫女たちの両眼が真っ赤に輝く。
三人が立ち上がった。
一斉に巫女装束を脱ぎだす。
三様の美しい裸身をさらした巫女たちは、信虎に背を向けた。
それぞれの背中には、ひとつずつ鐘の入れ墨が彫られている。
三人は両手を挙げると、ゆらゆらと身体を揺らし始めた。
艶かしく美しい肢体。
不思議なことが起こった。
巫女たちの身体がうねると、背中の入れ墨ももちろん肌の動きに伴って動いてはいたが、そのうちに画であるはずの鐘自体が揺れ、大きな鐘の音を響かせ始めたのだ。
三つの鐘は、お互いに反響し、さらにその音を増していく。
最後には耳を破らんばかりの大音響と化した。
空怪と夜叉姫は両手で耳を塞ぎ、身をすくめ、さすがの信虎も顔をしかめる。
突然、音がぱたりと止んだ。
巫女たちの両眼の光が消え、表情が元に戻った。
自分たちのあられもない姿に気づき、慌てて巫女装束を着なおす。
信虎は巫女たちをぎろりとにらんだが、視線をやや上方の空中へと移し、右手を挙げた。
手を開き、瞳を閉じる。
突如、空中に薄暗い空が浮かびあがった。
空の中心には赤い月。
大広間の空中に透明な大きい板が出現し、城外の様子が映し出されているのだ。
信虎が眼を開けた。
赤い月から数えきれないほどの異界の軍勢が降りてくるのが、はっきりと見える。
「ふははは!!」