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空怪が三人の巫女たちを信虎の前へと引っ立てた。
「では、お前たちに門を開けてもらうとするか」
「私たちが力を貸すとでも!?」
桜が信虎の言葉に反発した。
他の二人も口を一文字に結び、頷く。
「お前たちは何か勘違いをしておるようだな」
「?」
「『門鐘の巫女』もまた、将軍家が異界の軍を呼ぶ道具にすぎぬ。すなわち、お前たちも竜丸と同じく、わしの道具にすぎぬのだ」
三人の顔が青ざめた。
異界への門を開くことは、自分たちの承諾なくとも可能なのか?
それは三人には予想外であった。
「お前たちが自ら命を絶てるなら、阻止も出来よう。しかし、『門鐘の巫女』は自害を禁じられておるはず」
「くっ」
桜が唇を噛んだ。
まさに信虎の言う通りであった。
「では」
信虎が言った。
「将軍家の名において命ずる!『門鐘の巫女』たちよ、異界の門を開き、わしの軍勢を呼べ!!」
信虎の言葉が終わると同時に三人の巫女の顔が突然、人形の如く無表情になった。