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「ではどうすれば、わしが異界の軍を自由に動かし、天下を獲れるのか?」
「………」
「わしが、お前になるのだ。将軍家になるのだ!!」
(何を言っている!? こいつは狂っているのか? ただ、妄言を吐いているだけなのでは?)
「わしの力をもってしても、他人の身体にずっと居座り続けることは出来ぬ」
狂虎は続ける。
「しかし、血が繋がっておれば…わしの血筋であれば、それは可能なのだ。将軍家の婿となり、その地位を継ぎうる男子、そしてなおかつ、わしの血筋であり、ずっと乗っ取り続けることが出来る者、それが」
狂虎が竜丸を指した。
「お前だ、竜丸。大人しく、わしを受け入れよ。さすれば天下を獲れるぞ!!」
狂虎が、ひひひっと笑う。
自らの策に酔い、歓喜の表情を浮かべている。
竜丸の方はと言うと、途中から狂虎の言葉が頭の中で反響し、ぐるぐると回り続けていた。
(血筋…私が狂虎の血筋? 何を言っている? やはり、こいつは狂っているのだ。真実など話してはいないのだ)
「疑っておるな、その顔は」と狂虎。
「わしを見て、何やら逢うたことがあるような気がしたのではないか?」
(確かに…)
「それはわしが、お前の父、信竜に似ておるからだ。何故だと思う?」
「………」