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そして何より。
血のように真っ赤であった。
「何か来る!!」
今度は陽炎が赤い月を指す。
巨大な紅い穴に、ちらほらと白い点が見える。
最初は少なかったそれらが、次第に数を増していく。
無数の小さな点が徐々に大きくなると、その形がはっきりとしてきた。
軍勢だ。
見たこともない奇異な具足を着けた全身が銀色の人形のような容姿の兵士たちが、丸い大きな皿状の乗り物に等間隔で、びっしりと整列して、ゆっくりと地上に向かって降りてくるのだ。
数えきれぬほどの軍勢が、空一面を覆い尽くしている。
「これはいったい!?」と蜜柑。
言葉を失う面々の中、陽炎が呟いた。
「これは武龍様に見せられた異界の軍勢…」
その集団の姿は、かつて陽炎の頭に武龍の意識が流れ込んだ折、断片的に見えた、異界より現れ鳳武尊を助け戦った軍勢と、そっくりそのまま同じなのであった。
七人が城門から城への通り道で大異変に遭遇する少し前、鬼道城の本丸御殿の大広間では、竜丸と夜叉姫の婚礼の儀が粛々と執り行われていた。
必要最低限な極めて質素なものであったが、凛々しく正装した竜丸の横に、ちょこんと座った白無垢姿の夜叉姫は想い人と夫婦になれる喜びに頬を朱に染め、元々の美貌がさらに大輪の華を咲かせたように輝きを増していた。