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蜜柑の言葉に静香の殺気が、やや緩んだ。
「済まぬな、お嬢ちゃん。このきれいな娘さんは今、ちと腹を立てておってのう」
奇妙斎が静香の横に並んだ。
「狂虎という奴に、まんまと騙されてな」
「狂虎!」
陽炎が声を上げた。
それは以前、化彦の口から出た、魔人たちに力を与えた者の名であったからだ。
「わしらは、かわいい娘さんを取り返すために鬼道城に行く途中じゃが、お嬢ちゃんたちは、いったい何の集まりかな?」
奇妙斎の問いに、蜜柑は急ぎ事情を話した。
「なるほどのう」
奇妙斎が、顎を撫でる。
「では、そちらの娘さんは」
奇妙斎が陽炎を指す。
「武龍とかいう者に頼まれた『魔祓いの石』を持っていく」
次に蜜柑を指した。
「お嬢ちゃんは弟を取り返しに」
最後に静香を指す。
「きれいな娘さんは、かわいい娘さんを取り返す」
「そして、狂虎を斬る」
静香が付け足した。
「では皆、行き先は同じというわけじゃな」
奇妙斎が、ぽんっと手を打つ。