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春馬が眼鏡をくいっと上げる。
「僕もです!」
「はは!」
無法丸が笑った。
ふと、遠い眼をする。
「お前たちを見てると優とトワを思い出す」
「「?」」
隼人と春馬は首を傾げた。
「では、もう一組をここで待つのですね?」
陽炎が蜜柑に言った。
蜜柑が、それに答えようとしたとき。
すさまじい殺気が、森を吹き抜けた。
無法丸が殺気の方向へ立ち、他の者を守ろうとする。
隼人がそれを押し、横に無理に並んだ。
「おっさん、邪魔だよ」と隼人。
無法丸が、ため息をつく。
森の向こうから二つの人影が近寄ってくる。
先頭の影が異常な殺気を放っているのだ。
無法丸と隼人は、それぞれ構えた。
「何やら、賑やかじゃのう」
後ろの小さな影が、軽い口調で言った。
奇妙斎であった。
渦巻く殺気をまとい、足早に迫ってくる影の正体、女剣士、静香は無言だ。
無法丸と隼人が眼に入らぬかのように歩を進める。
「あなたたちが武龍の言っていた最後の一組ですか!?」
蜜柑が呼びかけた。
静香の足が止まった。
もう少しで、無法丸と隼人の攻撃の間合いに入るところであった。
「武龍と言ったか?」
静香の鋭い眼差しが、蜜柑をにらんだ。
「武龍の名を告げれば、ボクたちに力を貸してもらえると聞きました」