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「おのれっ!!」
静香が吼えた。
刀を鞘に戻し、上体をひねる。
恐ろしく速い動き。
奇妙斎が自らの背後に居る桜を突き飛ばす。
「きゃっ!!」
桜が悲鳴をあげる。
刹那。
静香の身体のひねりが放たれ、神速の居合いの刃が疾った。
静香の双眸が、さらに輝く。
「きえぇぇぇいっ!!」
静香の刀は、しかし。
何者も捉えなかった。
振り切った刀身の最も先端部に。
奇妙斎が居た。
まるで体重が消失したかのように、木の葉の如く、刃に乗っている。
静香は唖然とした。
(この老いぼれ!! これほどの実力を隠していたのか!!)
「あまり年寄りに無理をさせるもんじゃないぞ」
奇妙斎が言った。
静香が刀を引く。
と、同時に奇妙斎が、ぽーんと横へ跳んだ。
静香も、すぐさま後を追う。
再び静香が納めた刀を抜き打とうとした、そのとき。
「待ていっ!! 静香っ!!」
小柄な奇妙斎から出たとは思えぬほどの大喝であった。
奇妙斎の気迫に、思わず静香が止まる。