表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武龍伝  作者: もんじろう
151/204

151

 狂虎の両眼が、がっと開いた。


 仮面の二つの穴が真っ赤な光を放つ。


「ぬっ!?」


 静香が身構える。


「そうか、そうか」


 狂虎が言った。


「お前は日の本が斬りたいのか。そうであろう?」


「な!?」


 静香が驚いた。


 胸に秘めし野望を言い当てられたのは、生き返った際の武龍以来だった。


「お前を生き返らせた者は、日の本を斬ることや非道を禁じたのではないか?」


 図星であった。


 静香は黙った。


「おそらく約定を破れば、再び死ぬと。そういう取り決めであろうが?」


 狂虎が舌舐めずりした。


「ふふふ、隠さずとも良い。この狂虎には全てお見通し」


「………」


「では、こういうのはどうだ? わしが、お前に新しい命と力をやろう。さすれば、前の者との約定(やくじょう)反故(ほご)にしても何も不都合は起こらぬ。そして、お前は望み通りに日の本を斬れる」


 この言葉に静香の身体が、ぐらりと揺れた。


「静香様!」


 桜が静香の背中へと、しがみついた。


 桜は必死の形相である。


「お前に、そんな力があるというのか?」


 絞り出すような低い声で静香が訊いた。


「ああ、もちろんある。わしの気配で、もう分かっているであろう。お前を生き返らせた者とわしは同じ穴のムジナよ。奴に出来ることは、わしにも出来る。そして、わしはつまらぬ約定でお前を縛ったりはせぬぞ。好きなだけ日の本を斬るが良い」


 再び、静香が揺れた。


「静香様!」


 呼びかける桜を奇妙斎が自分の方へと引っ張った。


 奇妙斎が静香と桜の間に立つ。


「嫌な流れじゃのう」


 奇妙斎が顔をぽりぽりと掻いた。


 渋い表情だ。


 静香から激しい剣気が立ち昇った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ