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魔力が無くなると同時に、何の支障もなかったはずの両腕が本来の大怪我へと変化したのだ。
無法丸を襲っていた両腕も元の姿に戻り、地に落ちる。
「ど、どうして!?」
きりきり舞いしつつ、鬼麿が叫んだ。
その頭上から陽炎が落下してくる。
右手の小刀が、すれ違い様に鬼麿の首をかき斬った。
「ぐっ!!」
鬼麿が低く、うなる。
ばたりと倒れた。
鬼麿は、それきり動かなくなった。
陽炎が、紐を大きく緩めた首飾りを鬼麿から外す。
元の長さに調節し、懐にしまった。
仰向けで倒れた鬼麿の見開かれた両眼を陽炎は手を伸ばし、そっと閉じた。
鬼麿に両手を合わせる。
無法丸が陽炎の側へとやって来た。
「今度は俺が助けられたな」と無法丸。
陽炎が頷く。
これまでの戦いを思い返していた。
敵は並み居る魔人たち。
味方も武龍や無法丸など、いずれも格段にずば抜けた力を持つ者である。
そんな中で、並の忍びと言える自分に出来ることなどあるのかと、常に自問自答していたが。
どうやっても勝てないと思っていた鬼麿を今、陽炎は倒した。
無法丸の窮地を誰あろう、自分が救った。
(私にも出来ることが。私にしか出来ない役目があった)
その想いを噛み締めていた。
(この世を救うために私に出来ることを全力でやる。武龍様を信じて)
「さあ」