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その右腕を操が掴んだ。
陽炎が振り返る。
「陽炎さん」
操が真剣な面持ちで言った。
「魔祓いの首飾りをあの魔物の首にかけるのです」
陽炎は、はっとなった。
頷き、小屋の右側にそびえる山肌へと走りだす。
ほぼ垂直の傾斜を忍びの体術で陽炎は駆けた。
向かう先は無法丸との戦いに夢中になっている鬼麿の背後。
鬼麿の硬い皮膚には普通の武器は歯が立たない。
自然、鬼麿の陽炎への警戒心は、ほとんど無いに等しかった。
斜面を走る陽炎が、鬼麿の背中に跳んだ。
「ん?」
無法丸にとどめを刺さんとしていた鬼麿が、背後の気配に振り向く。
陽炎の放った魔祓いの首飾りが、鬼麿の首へと輪投げの如く、すっぽりと入った。
突然。
魔祓いの首飾りの効力により、鬼麿の身体が激変し始めた。
みるみるうちに体躯が萎み、元の子供へと戻っていく。
「ぎゃーーーっ!!」
鬼麿が絶叫した。