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操は陽炎に頷いて見せた。
「よろしいでしょう。この地で造った最初の道具、あなたがたにお譲りします。私の道具は悪用される心配が無いので、安心してお渡し出来ますし」
操の言葉に陽炎は胸を撫で下ろした。
操が奥にある道具箱から、ひとつの首飾りを取り出す。
細いひもの輪の中程に白く、つやつやと輝く石が取り付けられている。
操が首飾りを陽炎に渡した。
「どれ」
無法丸が武龍から借りている刀を抜き、刀身を白い石へと近づけた。
「お」と無法丸。
白い石に近づくほど、武龍の刀は青白い輝きを失って黒ずんでいく。
これ以上は刀が壊れると、無法丸が石から離した。
刃が再び青白く輝く。
「なるほど」
無法丸が言った。
「では、これで」
陽炎が今一度、操に頭を下げた。
「ええ」と操。
「私の道具が役に立ち、『魔』を祓えるよう祈っています」
無法丸と陽炎が立ち上がり、小屋の入口に手をかけたところで。
「おーい!!」
聞き覚えのある少年の声が、外から聞こえた。
「出ておいでよ!!」
無法丸が戸を開けると、やや離れたところで美しい少年が立っている。
鬼麿であった。
着物は着ているが、両手で羽織っていた布は無く、無法丸に斬り落とされた右手を左手で持っている。
「この前は途中で逃げられたからさ。遊び足りないんだよね」