141/204
141
春馬が「えへへ」と笑う。
「お前は天才だぜ」
隼人も笑う。
蜜柑も笑った。
仲間を失わずに済んで良かった。
心から、そう思った。
武龍に指示された目的地も遠くない。
竜丸の居場所も、その近く。
(待ってて、竜丸。ボクが必ず助けるから)
蜜柑は、いっそうの固い決意に表情を引き締めた。
滝壺へと静かに注ぎ込み、しぶきを散らす美しい水の流れ。
太陽の光にきらめき、虹を作りだす。
滝を眺める岩場の側に、小屋が立っていた。
小屋の中には、その主である魔祓い師、操と無法丸、そして陽炎が向かい合って囲炉裏端に座っている。
無法丸と陽炎は無事に合流し、この場へとやって来たのだ。
牙狼に咬み破られた陽炎の忍び装束は、無法丸が化彦から回収し、洗った物に着替えられている。
操は二人の訪問者を細い眼で順に見つめた。
鍛治師の格好で、頭に布を巻きつけている。
布には二人が見たことのない複雑な模様が描かれていた。
魔祓いのまじないなのか。