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蜜柑の姿は見えなくなり、ゆらゆらと歪んでいた空間が元に戻っていく。
庭には蛍火と怯えきった三人の侍女、そして今さらながらやって来た城兵たちが残された。
歪んだ空間を抜けた先は木々の立ち並ぶ山道であった。
すでに陽は落ち、辺りは薄闇に包まれている。
蜜柑の足元には土を山盛りにした、にわか造りの墓のようなものがあった。
(竜丸は!?)
辺りを見回す。
居た。
空怪に抱き抱えられた竜丸が、やや離れた前方に立っている。
そもそもが蜜柑にはその強い霊力によって、どれだけ離れようとも竜丸の居場所が感じとれるのだ。
「おい、小娘もついて来ているぞ!」
空怪の前に立つ飛刃が呆れた。
「早く飛べ、空怪」と飛刃。
「馬鹿を言うな」
空怪が気色ばんだ。
「続けてすぐに扉は開けぬ。しばらく待て」
「誰だ、その娘は?」
蜜柑は新手の男の声に気づいた。
飛刃の後方、空怪の隣にひょろりとした男が立っている。
三十代半ば程の浪人風の男だ。