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春馬は白帯の前で、刀は抜かず両拳を握りしめている。
蜜柑は思わず、顔の前に両手を当てた。
春馬が一瞬で斬られるのではないかと、それが恐ろしかった。
結局は指の隙間から覗いてはいるのだが。
白帯が動いた。
春馬へと襲いかかる。
さすがにまずいと、隼人が春馬を守るため動きかけた、そのとき。
春馬の右手が高々と振り上げられ、そこから振り下ろされた。
掌中から小さな球が飛びだす。
白帯を狙ってはいない。
狙ったとしても春馬は当てられないだろう。
春馬の狙い。
それは自分の足元。
自らに飛んでこない、小さな物体を白帯は無視した。
とにかく春馬を斬れば良い。
そう考えていた。
地面にぶつかった白い球が破裂し。
すさまじい量の白煙をいきなり噴出した。
春馬が投げたのは「エレメントシェル」。
そして、その中身は殺虫の煙。
強度は最強である。
瞬間的に充満した煙に全員が巻き込まれ、何も見えなくなった。
皆が、げほげほと咳き込む。