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腰を落とし、交差させた両手で二刀の柄を握る。
唇をぺろりと舐めた。
いざ、死合い始まらんやと思われた、そのとき。
「ちょっと待った!!」
割って入った者が居る。
誰あろう、春馬であった。
これには皆が唖然とした。
これから繰り広げられるであろう凄惨な斬り合いに、こう言っては見も蓋も無いが、剣さえまともに振れぬ春馬が何を口出ししようというのか?
「あなたたち二人は」
春馬が口を開いた。
「虹丸さんたちを殺すと脅して、僕たちが逃げるのを止めましたよね」
春馬のあまりに堂々とした物言いに二人の魔人は、つい耳を傾けた。
「それなら、もう一歩踏み込んで隼人に『戦うな、刀を捨てろ』と要求することも出来るはず」
「「………」」
「それをしないのは、あなたたちに『刀で勝ちたい』という武人の誇りがあるからじゃないですか?」
「「………」」
「でも、この戦いは、まだまだ不公平なんですよ。何故なら」
春馬は隼人の横に立ち、白帯と蛇美羅を交互に指した。
「あなたたちは何度斬られても死なない。あなたは一回」
白帯を見る。
「あなたは二回」
蛇美羅を見る。
「死んでるはずですが、生き返ってる。これは極めて不公平です」
「「………」」
「しかもこの上、二対一で戦おうなんて…ちゃんちゃら可笑しくないですか? とりあえずは隼人と斬り合って、勝った形にしておけば良いってことですか?」
「眼鏡小僧、何が言いたいのさ?」と蛇美羅。
春馬からの侮辱、しかし的を射た抗議に苛立ち、眼が血走っている。
「せめて、二対二にしてはどうですか?」
白帯と蛇美羅は、ぽかんとなった。