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竜丸は今一度、はるか先の景色に眼を向けた。
自然と小諸城の方向へと視線が向く。
父母はどうしているだろうか?
そして空怪に誘拐される途中で意識を失ってしまった竜丸には、姉の蜜柑の安否が気がかりであった。
(姉様には私の居場所が分かるはず)
幼き頃より、どんなに懸命に隠れようとも、姉にはすぐに見つけられてしまった。
「どんなに離れても竜丸の姿は見える」と常々、蜜柑は言っていた。
とりあえずは姉の口から父母に、自分の無事は伝わるだろう。
竜丸は、そう考えていた。
まさか姉が空怪の後を追い、少年二人と、この鬼道城に向かって来ているなどとは思いもしない。
それは至極当然であった。
「竜丸」
竜丸の横顔を見つめる夜叉姫が声をかけた。
「どうした? 悲しそうじゃな」
竜丸は夜叉姫に顔を向けた。
夜叉姫が心配そうな表情を浮かべている。
「家族を思い出していました」
「そうか」
無理もないというふうに、夜叉姫が頷く。