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頭が下に、脚が上になる。
これは。
先ほど拳法が見せた動きであった。
静香の白刃が、きらめいた。
次々と五人の忍びが手裏剣から落ちていく。
全員、一撃で致命の傷を与えられていた。
操り手を失った手裏剣はふらふらと揺れ、失速し、地面に突き刺さった。
静香が着地する。
逃げていた奇妙斎が静香の横に戻ってきた。
「やっと片づいたのう」と奇妙斎。
その右手が桜の溌剌としたお尻を撫で回す。
「きゃーーーーっ!!」
奇妙斎が、きりもみしながら吹っ飛ばされた。
拳法と五人の忍びを倒した日の夜。
月明かりの下、湖のほとりで水浴びをする桜の姿があった。
若くみずみずしい肢体を淡い月の光が、闇の中で浮かび上がらせる。
桜の視線の先には、奇妙斎が番をする焚き火の炎が燃えているのが見える。
(奇妙斎様には気をつけないと…)
桜は焚き火の方へ顔を向け、こちらに来る人影が無いか、見張りながら身体を清めた。
今のところは誰も来る気配は無い。