118/204
118
疾風の速さの斬撃は、逆さになった拳法の頭に叩き込まれた。
否。
その刃は目標へと、たどり着く前に停止していた。
拳法の大きな両手が静香の白刃を左右から挟み、押さえつけている。
真剣白刃取り。
空中で逆さまの体勢で、拳法はやってのけたのだ。
(見切った!!)
拳法の双眸が輝く。
その両脚が静香の頭を目がけて蹴り出される。
「豪破激殺蹴!!」
拳法が咆哮した。
静香の頭を粉々に粉砕する、必殺の一撃。
が。
拳法の両脚は空を掻いた。
そこにあるべき静香の頭は無かった。
白刃取りされたと見るや、静香はすぐに刀を放した。
自らの最強の武器を何の躊躇もなく、一瞬で手放したのだ。
拳法が見たのは、あると思われた位置よりも、ずっと下にある静香の後頭部であった。
刀を捨てた静香は素早く屈み、二度目の上半身のひねりに移行したのだ。
拳法からは見えない静香の両眼が、強烈な青い光を放った。
「きぇぇぇーーっ!!」