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静香が腰の刀の柄に手を添え、上半身を左へとひねった。
拳法に対して背を向けた形である。
「お」
拳法が瞠目した。
静香の全身から隠しようもない殺気が立ち昇る。
その構えをひと目見て、拳法は理解した。
身体のひねりをもって威力を増した必殺の居合いの斬撃の軌跡が、はっきりと頭の中で見える。
「ふはは!!」
拳法は笑った。
(見えた! それならば俺の勝ち!!)
拳法の両脚が土煙をあげ、地を蹴った。
すさまじい速さで静香へと飛びかかる。
その身体が途中で左に傾き、半回転した。
すなわち、頭が地へ、両脚が天を向いた姿勢。
天地逆のまま、静香へと上空から襲いかかる。
これはいったい、いかなる策か?
あるいはこれが、拳法の必殺の技への準備なのか?
どちらにせよ、静香から拳法の姿は見えない。
迫り来る気配をただ、斬るのみ。
「ちぇぇぇーーーいっ!!」
静香が吼えた。
上半身を元の位置へと戻しつつ、烈迫の気合いと共に白刃を抜き放つ。