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その身体から、すさまじい殺気が噴出し、自らへと絡みつくのを静香は瞬時に察した。
(こやつ、できる)
静香の剣気も拳法の殺気に呼応し、むくむくと本性を現す。
二人の間で、お互いの闘気がぐるぐると絡み合い、渦を巻いた。
「剣呑、剣呑」
奇妙斎が首をすくめる。
そのとき、突然、拳法の背後の森から何かが飛び出した。
それは恐ろしく巨大な手裏剣であった。
中央部分と刃の部分が独立して、外側だけが回る仕組みとなっている。
手裏剣は拳法の右側へと曲線を描き飛び、そこから大回りで桜と奇妙斎に向かっていく。
手裏剣の上、中心部分に乗る五つの影。
鳳衆の忍び、一影、二影、三影、四影、五影の五人である。
「奇妙斎!!」
静香が拳法をにらんだまま、大声で言った。
「桜を守れ!!」
「何じゃ、年寄り使いが荒いのう」
奇妙斎が、ぼやく。
が、すぐに桜を「よっと!」と軽々と胸の前に持ち上げた。
枯れ枝のように細い身体とは思えぬ力強さであった。
そして、次に意外な健脚ぶりを見せ、脱兎の如く背後の森へと走りだした。
「逃がすな!!」
一影たちが口々に叫び、巨大な手裏剣が奇妙斎の後を追っていく。
「静香様!!」
遠ざかっていく静香の背中へと桜が叫ぶ。
不安げな面持ち。
「あれ?」
桜は首を傾げた。