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「白帯の代わりに拳法めを向かわせました。奴ならば万が一にも負けはないかと」
空怪が顔の汗をぬぐった。
妙に静かになられても、それはそれで生きた心地がしない。
「腕丸を殺した蜜柑らは、どうなった?」
狂虎が、ぎろりと空怪をにらんだ。
「そちらは蛇美羅と白帯が」
空怪が、ひきつり笑いで答える。
「あの二人も負けはありませぬゆえ、ご安心ください」
こくこくと頷く。
「針蔵を殺した男は鬼麿が追っておるのか?」と狂虎。
「は。牙狼と化彦もついておりますゆえ、労せず終わるかと。鬼麿の悪い遊び癖が出なければですが…」
狂虎が空怪に背を向けた。
空怪が、ほっと一息つく。
「夜叉姫は?」
「姫様は、すでに竜丸にご執心のご様子。自らの部屋に留め置かれまして…その…」
「何だ?」
「竜丸が裸で居るのを見た侍女もおります」
「ふっ」
狂虎が笑った。
「まあ、良い。楽しめるのも今のうちだけ」
狂虎が振り向く。