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川に仕掛けた竹造りの罠に魚がかかっていないか、具合を見ている様子だ。
「あんた」
女の声がして、小屋から大柄な女が出てきた。
小柄な男の側に行き、「獲れたかね?」と話しかけている。
蜜柑と春馬は眼を合わせて頷いた。
ゆっくりと小屋へと歩きだす。
男が二人に気づいた。
竹かごを岸に上げ、大柄な女を背後に庇った。
油断のない眼差しで蜜柑と春馬を見ている。
「あ、怪しい者ではありません」
春馬が、敵意が無いと示すため両手を振って呼びかけた。
蜜柑も精一杯の笑顔を作る。
男は答えない。
依然として眼が鋭い。
後ろの女も不安げだ。
「じ、実は僕たち、何も食べてなくて」
春馬が言った。
「その…何でも良いので食べる物を分けてもらえたらなー、なんて」
そう言って、春馬がにこにこしたところで。
蜜柑の腹が盛大な音を立てて鳴り響いた。
蜜柑が真っ赤になる。
「あははは!」
大柄な女が大笑いした。
そして、男にこう言った。
「じゃあ、ご飯にするかねぇ。ねえ、あんた」
小屋に住む夫婦は虹丸と澪と名乗った。
二人は蜜柑と春馬を小屋へと招き入れ、串を打ち囲炉裏で焼いた魚と野菜の汁物を振る舞った。
一心不乱に食べる蜜柑と春馬を見て、澪は笑った。
「よっぽど腹が減ってたんだね。おかわりもあるから、たんとお食べ」