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我々の知る戦国とは違う世界の戦国。
天上に青白く光る月。
かつて惨鬼義盛という戦国武将の城、暁城があった場所。
すっかり朽ち果て、もはや原型も留めぬ城跡近くの地面には、まるで巨大な刀で斬りつけられたかのような深く長い溝が口を開けていた。
城跡と溝の、丁度中間ほどの辺りを歩く一人の男。
年齢は十代の半ばか。
藍色の着物に身を包んだ武士の風体である。
男、いや少年の顔には両眼の周りを隠す白い仮面がつけられていた。
仮面に空けられた二つの穴から、つぶらな瞳が覗いている。
口の部分はむき出しでふっくらとした、まるで娘のようにさえ見える、かわいらしい唇が鎮座していた。
仮面の少年が足を止めた。
足元の地面を見つめる。
「強い魂を感じる」
少年が呟く。
地に右手のひらをかざし、何やらぶつぶつと唱え始めた。
少年の足元が、ぼぅと青く発光する。
青い光の地面から、地上へと浮かび上がってくる物があった。