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望んでたのはコレジャナイ!  作者: 伊住茉莉
2/15

1:困惑と諦め

「...シア?フェリシア!もう、階段から落ちるなんて...。早く目を覚まして...。」


(はて、フェリシアとは誰のことだろう)

きっと私は階段から落ちたあと、救急車か何かで病院に運ばれたに違いない。

そして多分同じ病室にフェリシアさんという方がいるんだろうなぁ。ていうか、私生きてたのね。

そんなことを考えながら、眠りから目覚めたばかりのあと10分〜とか言いたくなっちゃう、気持ちよくもうっとうしいまどろみをはねのけ、ゆっくりと目を開ける。


(ん...?今時の病院って天蓋付きなのかな?)


目に入って来たのは、星空をモチーフにしたのであろう、ベッドの天蓋。誰のベッドだろうか。

病院のベッドにしてはいささか豪華すぎるような気がした。とはいえ私といえば、健康が取り柄だったので、ここのベッドを比較するような最近の病院事情には詳しくない。

でも、この天蓋はちょっと病院にしてはありえないのでは?と思う。

周囲の状況を察知するべく目をしっかり開くと、驚きと喜びを足したようなどよめきが起こった。

右を見るとオレンジ色の髪の毛を後ろで1つにくくっている30代くらいの若々しい女性と、その隣にいる40代くらいの金色の髪の男性が私を見ていた。女性は一瞬、安堵の表情を見せたが一転。鬼のような形相になって私を見た。


「フェリシア!あれほど足元に気をつけなさいと言ったのに、階段から落ちるなんて...。お母様をあまり心配させないで頂戴!」

「まあまあ、ルーシィ。フェリシアも起きたばかりなのだから。あまり怒鳴ってはいけないよ。」

「これが怒らずにいられますか!まったくあなたはいつもフェリシアに甘いんだから...」

(お母様とお父様...?それより、もしかして私がフェリシア?!)

どうやら私は階段から落ちたという2人の娘フェリシアになっているらしい。正直まだ受け入れることはできてないが。


なんとなく謝った方がいいような気がして、両親に向き合ってごめんなさいと謝った。それを皮切りに、ルーシィと呼ばれた女性はさらにガミガミと怒り出した。

どこの世界でも子供を心配する親の気持ちは変わらないんだなーと呑気に考える。

説教はすべて右から左へと耳を通り抜けていくが、投げられる言葉からいろんな情報を得ることができた。

お母様の話から察するに、私がシャルレイ王国の名家、エリオット家に生まれた長女、8歳のフェリシア・エリオットであるということ。

私の父である、ルイス・エリオットの爵位は伯爵であるということ。

シャルレイ王国は、公爵・侯爵・伯爵・男爵・子爵の順番で地位が高いとされているが、侯爵家は常にいるわけではなく、王位継承権を放棄した王族のみ有することができる爵位となっている。

それを考慮するとなると、地位は高いと言える。


最初こそ、私がフェリシアであるということに混乱していたが、時間が経つ(怒られ続ける)につれて、冷静になって来ていた。

お陰で、元々フェリシアが有していた記憶や知識をすんなりと自分の身に染み込んだ。本当は私がフェリシアに入り込んでいるようなものだけど。


「じゃあフェリシア、今日は1日部屋から出てはなりませんよ。いいですね」

鋭い眼光に睨まれると、私はこくこくと頷くしかなかった。それこそ蛇に睨まれたカエルのように首以外は動かなかった。

これにより、屋敷探検は今日1日できないことになる。

つまらない。


「ねえルーミア。廊下に出てもいいですか?」

ルーミアというのは、エリオット家の侍女長のことだ。普段、私にはヴィオラという侍女がついているのだが、今日は階段から落ちて意識を失うということをやらかした私に侍女長がつきっきりでいてくれることになっていた。

それこそお母様から送り込まれて来た見張りだ。

侍女長は私が何気なく放った言葉に即座に反応して来た。

「お手洗いでございますか?」

うっ、きっとこれすぐに却下されるパターンだろうなと思いつつ、曖昧な反応を返すとすぐに

「それならばダメです。今日は部屋から出ないよう奥様から仰せつかっておりますので。」といわれ却下された。


今いる場所は8歳の少女1人用の部屋とは思えないほど広く豪華な部屋だが、特にすることは何もないため、手持ち無沙汰だった。

なんとなく手を眺めると、その肌は白く、爪は綺麗に伸ばされていた。胸の下あたりまであるミルクティー色の髪の毛はふわふわとしている。いかにもお嬢様という感じがする。

 そういえばまだ自分の姿を見ていない。せっかく時間があるのだし、見ておこうと思い立った。

「ねぇルーミア。鏡を持って来てくれますか?」

「かしこまりました。こちらの手鏡をお使いください。」

(超美少女だ...)

さっきから可愛いのでは?と思ってはいたが想像以上に美少女だった。クリクリとした青色の瞳にぱっちり二重。少し桃色になっている頬、そして子供らしいぱっつん。

なんだか見たことがあるような気がするが、こんな可愛い知り合いはいなかったので気のせいなのだと思う。


(やっぱり、死んだのかな?ていうか転生?)

今までの感じからして、"転生"という結論が1番しっくり来る気がした。ここは確実に日本ではない。

(でも、もしかしたら景色くらいは見慣れてるんじゃ...?)

「ルーミア。窓から外の景色をみてもいいですか?」

「はい、構いませんよ」

一縷の期待を胸にベッドから降りて窓に近づく。歩幅は小さく明らかに史華ではない。でも、もしかしたら。

そう思って覗き込んだ外の世界は異世界だった。石造りの家が立ち並び、奥には小さな山も見える。フェリシアの家であるエリオット伯爵邸は少し丘の上に立っているらしく、街全体を見渡すことができた。


「本当に違う世界なんだ...」


ぼそりと呟くと、幸いルーミアの耳には届いていなかったらしく聞き返されたが、ゆるゆると首を振って大人しくベッドに戻った。


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