8.リスの懇願
大変遅くなりすいません!どうぞよろしくお願いします。
運ばれてきた料理をしっかりと目を凝らしながら記憶する立夏。
見た目も素敵に盛られた料理は目にも楽しいものだ。
最近流行りの画像アップアプリで料理などを撮ってる人も居るが、立夏はあえてそれをしない。
目の前の料理をしっかりと脳に刻みこみ記憶しておくことが料理に対しての敬意というものだ。
なのでじっくりと観察し、その思いを記憶しておくのだ。なぜならば感動は画像では収まりきれないからだ。
お互いに料理の前の挨拶を済まし、立夏はメインを一口に切り分ける。
ゆっくりと噛みしめるように最初の一口を味わう。
(めちゃくちゃ美味しい…!!!)
美味しい料理に出会うと、目の前がキラキラと輝く光景をいくつも見てきた立夏。
立夏はいままさにその光景を見ている。
頬を緩ませ、美味しい料理を小さい口に収めていく。
ふと、我に返った立夏は、目の前に座る立花に目を奪わえる。
それは見つめている目がとろけるばかりの笑顔を立夏に向けていたからだ。
立夏は一気に現実から引き戻されその恥ずかしさでさっきまでの勢いを急速にしぼめる。
(そうだった!目の前に人、しかも男の人がいたんだった。恥ずかし!)
「立夏さんは食べるのがお好きなんですか?」
「うっ、はい…。すみません。」
立花に恥ずかしい場面をみられてしまい、今まで勢いがついていた手元をゆっくりと下げ、料理をゆっくりと堪能したが、ほとんど味わうことが出来ず、とうとう最後のデザートになってしまった。
デザートに出てきたのはティラミス。これもなんとも言えない美味しさ。
マスカルポーネの甘いくちどけにコーヒーの粉がふりかけられ、絶妙のハーモニーを醸し出してる。
さっきまではまったく味わうことができなかった立夏だったが、甘さに脳がしびれる。
「美味しいですか?」
「はい!とっても!」
「それはよかった。立夏さんの幸福そうな顔みれてよかったです。」
「それは、すいません。おいしいお料理だったものでつい…。つまらなかったですよね。あまり会話できなくて、すいません。」
「いえいえ、立夏さんが食べてる姿を見ていたら会話なんて必要ないですよ。見てて飽きませんでしたよ?おもしろかったし。」
「面白かった?え!どこか変でした?!」
「いえ、全然。とっても一生懸命に食べてる姿が可愛らしかったのでつい観察しまってということです。」
その言葉に立夏はまたもや顔を赤くした。ずっとみられながらしかも食べてるところをずっと。
これは立夏ではなくてもとても恥ずかしいと思うだろう。
「観察しても全然おもしろくありません!恥ずかしい…!」
まさに穴があったら入りたい状態の立夏。
しかしそれとは反対にその姿を眺めていたい立花。その席の雰囲気はどこからどう見てもバカップルである。立花のまわりには他人からみたら、王子様が花を背負ってるイメージだろう。
だだ漏れである。
そんなやり取りをし、程なく席をたった。
「あの!少ししかありませんが私も出します。また足りない分はまた後日お渡ししますので。おいくらですか??」
お会計をしてくれてる綾乃に立夏はお食事代を聞き出した。
「お代はすでにりっちゃんから貰ってるからいいのよ。」
「え!でもそんな申し訳ないので、私も出します。」
「立夏さん、今日は私が強引に誘ったので、ここは私に持たせてもらえませんか?」
「立夏ちゃん、りっちゃんがそう言ってるんだから甘えちゃいなさい。ね?」
「それでも…。」
「じゃあ、これの代わりにまた僕の店でお花を買いに来るっていうのはどうですか?」
「まぁ!それいいじゃない!しかもそのままお店に来てくれると嬉しいわ。」
綾乃が「名案!」と言わんばかりに立夏に詰め寄った。
有無を言わせない雰囲気に飲まれ、綾乃と立花の提案に乗ることにした。
「じゃぁ、お言葉に甘えて。こんどは必ず立ち寄らせてもらいます。」
「ええ!絶対よ。」
立夏は綾乃にお辞儀をし、立花と一緒にお店を出た。
そんな二人を見送る綾乃は内心ほくそ微笑んでいた。
「りっちゃん、がんばんなさいよ…。」
そんな綾乃のつぶやきは二人には届かないほどの声かけだった。
夜道を女性が歩くのは危険だから最寄り駅までみおくるという立花の申し出に立夏はうなずいた。
たしかにここまであるくまではあまり街灯がないので、助かる。しばらく綾乃の店を出て10分。会話という会話をせずとうとう最寄り駅までたどり着いてしまった。そして鞄から定期をだし後は改札をくぐるだけになる。
「立花さん、今日はごちそうさまでした。」
「いえ、立夏さんとお食事できて楽しかったです。それとこれ…。」
立花はズボンのポケットからチャリッと鍵を取り出し、立夏の前に差し出した。
そして立夏の片手を持ち上げ、手のひらの上に落とした。
そう、立夏の自宅の鍵だ。いままで人質ならぬ物質として立花が預かってた鍵がやっと立夏の手にもどってきたのだ。
立夏は今の今まですっりと忘れており、そのための食事だったのだから無防備にもほどがあると内心呟いた。
しかしそれと一緒に折り畳んだ紙も一緒に載せられた。それをカサリとひらくと電話番号らしき番号が書かれており立花に顔を向けた。
「あの、これ。」
「僕の電話番号です。登録しておいてください。ちなみに立夏さんの番号は080-××××-××××ですよね?」
立夏はそのまま硬直してしまった。そして耳を疑った。
立花の口から発せられた番号はまぎれもなっく立夏の電話番号だったからだ。
一語一句まちがえなく。立夏の顔はさっと青くなり記憶を辿った。
(どこだ!どこで私は番号を教えた!)
額に手をおし、必死にたどったが記憶にぶちあたらない自分が恐かった。
もしそうでなければ立花は立夏の鞄から電話をもちだし見たということだ。
ちなみに立夏はスマホをもってない。スマホをもってないかわりに古き良き時代のガラケーを使っている。
そして想像した自分、いや、立花に恐怖した。
「あなた他人の鞄を漁ったの!!!しかも…!しかも携帯を見るなんて!イケメンだからってなんでも許されると思ってるの!!」
立夏の怒りは最高潮へとのぼりつめていった。立夏の怒りはこんなもんでは治まらない。
しだいに口調が強くなって行く自分でもよくわかり、そしてそれに反応するようにまわりの客がざわつく。
怒って当然といえよう。他人、今日会ってまだまもない人に漁られたのだ。
さっきまではすこしどきどきさせられ、信用をもきずけるかもとおもった立夏だったが立花の信用が見事にくだけて行く。
「すいません。でも悪いとも思ってないです。」
「なっ!」
「だってこのまま立夏さんとの出会いをなかった事にしたくありませんでした。」
「だったら素直にきけばいいじゃないですか!」
「じゃあ、立夏さんは素直にいいましたか?」
そう立花に質問され、立夏はぐうっと言いよどんでしまった。
早々にプライベートなものを教えることはできない。ましてや知らない男性に教えるなんてことは立夏のなかではあり得ないこと。
いつぞや合コンで電話番号の交換を迫られても頑なにも提示はしなかった。その時にあっても教えるきにさらさら慣れなかったからだ。
周りはどうしてそうほいほいとだせるのだろうと、逆に立夏は心配になることもあった。
そして、立夏は会社の男性スタッフから「鉄壁の女」ともいわれるぐらい男性に対して警戒心が強いことをよくからかわれていた。
会社の男性スタッフはすでに身内だから冗談だし理解してもらってるので平気だが、そこを一歩でるとそこは立夏にとって魔境の地。
身を守る鉄壁を築くしかない。しかし、立花はそんな立夏の鉄壁を見抜くようにさらりさらりといつのまにか入り込んでくる。
作っても、作ってもどんどんと入り込んでくる男・立花。
でもそこまでする理由が立夏は分からなかった。そこまでする立花がなぜこのような暴挙に踊りでたのかすこし興味がわいた。
「どうして、そこまでするんですか…。だって今日はじめて会ったのに、ここまでする必要ありませよね?」
「え〜っと、え〜?どうしよう、立夏さんって鈍感なのかな…っ;」
立花はほとほと困ってしまった。ここまでとは、と。
あるていどここまで言うとなると鈍感をとおりこした超絶鈍感といえよう。
「えっと、じゃあ言いますね。立夏さんに僕はスゴくスゴく惹かれてます。付き合ってもらいませんか?」
「え?」
「はい。言いましたよ。もう立夏さんココまでされて気づかないなんて僕人生の中ではじめてですよ。」
「だから、はい?なんで!」
立夏の声はまたもや駅の構内に響き行き交う人をびっくりさせた。
31年目にしてはじめて立夏の中で錆び付いていた歯車がやっとうごきだした瞬間だった。
お読みいただき誠にありがとうございます。
これから仕事が忙しくなりさらに亀更新になりますが、でもがんばって更新はするので引き続き
「リスとライオンの攻防戦」をよろしく願いします!!(>人<)
そして感想・コメントもお待ちしております。