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リスとライオンの攻防戦  作者: 灰鼠
6/10

5.ライオンの幸福感

「ぼく立花律と申します。お名前おうがかいしてもよろしいでしょうか。」


花屋のスタッフ改め、立花律は立夏の鍵を自分のポケットにもどし姿勢を正し、綺麗な唇に弧を描きながら、にっこりと微笑んだ。

立夏はその笑顔が胡散臭いように見えてしかたがない。

それもそうだろ、いきなり今日はじめてあった相手にここまで笑顔で食事に誘われたのは誰しもが疑わしくなるのは当たり前だ。

それを信用して、31歳にもなってほいほいついていくのはいかがなものなのか。しかし状況が状況なので怪しい男についてほかない。


立夏は数秒遅れて立花に習い改めて恩人(?)に努めて、冷静に、社会人の礼節をもってして、立夏はお礼を言った。


「申し遅れました。橘立夏と申します。改めてお礼申します。鍵拾っていただいてありがとうございました。」



すこしかしこまりし過ぎただろうか、などと立夏はお礼を良いながら客観的にみていた。

(多分これで充分でしょ。この人とはこれきりだし)



「立夏さんっていうんですね。これから私のことは律とよんでください。」




沈黙が流れた。





立夏は再び呆気し、怪訝な顔を立花にむけた。

(コノヒトハナニオイッテルンダ。)



「あ!すいません。ほら名字同じでしょ?ややこしいかなって思って。」

「本当ですね…。度々失礼しました。」



立夏は立花から指摘しているところに気づきすこしの配慮に心を落ち着かせるが、立夏からしたら名前呼びは少し抵抗を感じた。

なぜなら異性からはほとんど自分の名前など呼ばれた事がなかったから。呼ばれても6年前とほぼ遠い記憶に近い。



一見して、微笑ましい感じなりかけたが、立夏は立花からいきなり食事のさそいを受けているが立夏にも予定というものがあるが、後は自宅にかえり食事をするだけだったので、その有無をいわせない雰囲気に乗る事にした。



********



立花は、立夏の予定などおかまいなしという否をいわせない雰囲気を自分でつくっていることに内心に驚いていた。

(あれ?俺なに言ってんだ?)



過去をみても立花が人に対して意地悪なことをしたのはほぼないに等しい。

いたずらな戯れだったらあるが、嗜虐的な思考に陥ることはない。



(──ああ、なんだろう、もっと困らしてやりたい。)



立夏の困った顔がみたい、もっと困らせてあたふたする様をみてみたい。

立花の中でふつふつとわきあがる幸福感。はじめての感情がいったいなんのかをしりたくて立夏を食事に誘ったがわき上がる感情に抑えがきくかどうか立花もわからない。

いままでにない感情を立花はすっかりと持て余してしまいこのままどうなるかわからないことでさえも、なんの不安もない。むしろ楽しみだという思い。

この上なく挑みがいがありそうだと立夏の困った顔をみながら近所のおいしそうなお店をひそかに頭の中でリストアップした。




立花の中で捕食者の本能がちらりと垣間みれた。

百獣の王、ライオンの狩りが今開始される。




********



立夏は立花から片付けが終わるまで昼間のベンチで座って待ってくれと勧められた。

このベンチに2度すわるはめになるとは立夏も思いもしなかった。そして今の気持ちは売りにだされる子牛の気持ち。

ふとベンチから片付けをしている立花をみやると、やはり働いている姿にみいってしまう。


その姿だけでも心が落ち着いていくのがわかる。わかるから立夏はすこし気持ちを切り替えることができたのか現金な自分にあきれてしまったのか。

どちらにせよ単純だなと感じてしまう立夏の脳内機能が立夏自身を落ち着かせたのは事実。

などと考えていると、お腹の虫は正直なのか、ぐぐーっと晩ご飯の時間を正確に教えてくれた。



(お腹へったな…。)



お腹をさすりながらお腹の虫を落ち着かせ、ふとみると立花が背を向けて肩をふるわせうつむいていた。

またやってしまったと立夏は思ったが、もうあきらめ開き直ることにした。


「もう、笑い過ぎです!しょうがないじゃないですか。生理現象なんだから!」

「すみません。可愛らしい虫さんですね。お待たせしました。」



立夏はベンチから立ち上がると立花はそのベンチも店内にはこびいれ、シャッターをしめた。

ガラガラと扉がしまる音はどことなく寂しさがありあまり好きではない立夏。その間シャッターの鍵をかけていた立花は掛け終わったのか立夏より小さくなった、ちいさく屈んでもおおおきさは感じるのが不思議だが立ち上がりった立花を見上げた立夏はその背の高さが嫌みに見え、すこし顔を歪めた。

そんな立夏を見下げる立花は立夏ににっこりとさらに微笑んだ。



「──背、小さいですね。何センチなんですか?」

「150です。そうおっしゃる立花さんは背高いですよね。180ぐらい、いやもっとありますよね?」

ちょっと嫌みっぽく返す立夏はにっこりと嘘くさい笑顔を立花に見上げていった。

立夏も立花の背が高いのは誰がみてもわかるぐらい高身長だということはわかる。しかし立夏も背が小さいので目の差異もある。


「はい、193あります。」


やはり巨人族である。立花の背は日本人からみても背が高い分類に入るみたいだ。


150と立夏は言ったがすこし盛っている。

先月の健康診断で計測したときにもともと150あった身長が1センチ短くなっていたのだ。

何かのまちがいだと思い看護師にもう一度はかり直してもらっても数値は変わらず、むしろ看護師がやっきになて何度もはかり直したが数値は変わらず。

そのあとのショックに立ち直れなかったのは記憶に新しい。


それを思い出したのか、ちいさな立夏を見下げてニコニコしている立花に立夏は威嚇するよにきっと目をつりあげた。

「そんなことよりどこに行くんですか?立花さん。」


「あ、名前戻ってますよ。律と呼んでください。」

「いえ、立花さんと呼ばせてもらいます。」

「えー。ややこしくないですか?」

「ややこしくありません!2度しか会ってない人に呼び捨てされて平静になれる訳ないじゃないですか!」


立花のなかでは不思議ではないのだろう。立夏にとってみたらそれはすごく居心地の悪いものだった。

この見た目だ。そう女に困った事がないひとのことを鵜呑みにしてはこちらが痛い目をみるのがおちなのだと立夏は冷静さにしがみついた。



「そうかな〜。立夏さんによばれたいな〜。」

「馴れ馴れしく呼ばないでください〜!この年になるとそうそう呼ばれないから恥ずかしいです。」

「立夏さん、まだ20代だから大丈夫ですよ〜。」



立花がはなった一言に立夏から沈黙がつづく。

その雰囲気に立花は立夏からながれる冷気を感じ、立夏に声をかけた。

「立夏さん…?どうさ──」

「わたしは31歳じゃ──────────!」



立夏の雄叫びは夜の空に声高らかによく響きこだましたのだった。

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