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リスとライオンの攻防戦  作者: 灰鼠
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9.攻防戦の始まり

「あ、あの、私───。」

立夏はなにか言葉を発しようと懸命に口を動かすが、なにを言ったら良いのかわからないため、口は空気だけを送り出すだけだった。

そんな立夏をなだめるように立花はそっと立夏の手を紙ごと手から落ちないようぐっと握りかえした。


「お返事はまたでかまいません。必ず家についたら連絡をください。心配ですので。」


うまく言葉にできない立夏はなんとしても返事をしようとした時だ。かぶさるように駅のアナウンスが次の電車がくることを告げた。

立花に早く行くようにと促され、立夏はうなずく程度しかできず改札を通り、振り返ると手をふる立花が見えた。

軽く会釈をし、そのまま階段をかけのぼるとちょうど電車が着いておりそのままその電車に飛び乗った。



立夏が飛び乗った時と同時にドアがしまり、一息つくとどっと疲れが襲う。

席は空いていたがどうしても座る事ができず、そのままドアに寄りかかる。うごく背景をどことなく遠いところを見つめた。

そして今日の出来事を振り返って考えてしまった。


立夏の中で、恋愛というのはほど遠いものだと勝手に思っていた。

自分のことで精一杯。ましてや男性恐怖症に恋人などとうの昔にあきらめた立夏。


そんな思いも歳につれ、友達もましてや知り合いもどんどん自分の家族を作っていき、立夏はその場に立ち止まったまま。


(動けないの。誰か助けて!)


助けてもらいたい。悲痛な叫びは誰にも届かない。

鉄の仮面は立夏の心だ。誰にも見せない、見せたくない。醜い感情は平気な仮面の中。

そして壁をしっかりときっちりと築いて誰にも侵されない防御、のつもりだった。


その鉄壁を超えてくる人がいた。


立花に出会い、初めて感情で”戸惑い”を経験した。

でもこの感情が立花からもたらされたものだと思うと苦しいと感じるがそれが嫌ではない立夏だった。




そんな考えを巡らせた立夏だったが、やはり立ってるのがつらくなり席に着くとすぐに眠気が襲ってくる。そのまま眠ってしまった立夏は降りる駅のアナウンスで目が覚め慌てて降りた。危機一髪である。


家に着くと無事に着いたことを立花に連絡した。すぐに立花が電話にでたので驚いたがすごく心配されていたことに驚いた。

そのあと今日のお礼をいい、通話が終わると気が抜けたのかよろよろとお風呂と歯磨きをし寝る準備を整えた。身体は休息を求めているのか力なくベッドに突っ伏すとすぐに夢の国へと旅立った。



向こうから告白をされた翌日、案の定仕事はぼろぼろだった。

単純ミスを連発し、しまいには社長に心配される始末。


そして、あの告白から数日が経とうとしたときである。

仕事を早々に終わらした立夏の携帯に着信がはいりそれに気がついた立夏はディスプレイを覗くとそこにはこの間自分で登録した「立花さん」という名前が表示されていた。

すこしこわばった指で通話ボタンを押すとすぐに電話の向こうから重低音がきいた声が立夏の耳朶を揺さぶった。

「はい、橘です。」


声が震え動揺した立夏だったがなんとか平静なふりをして持ち直す。


『こんばんは、立夏さん。立花です。いまお時間大丈夫ですか?』

「は、はい。大丈夫です。もう仕事は終わったので。」

『そうなんですね。お疲れ様です。』

「えっと、あのどうされました?」

『ああ!すいません。立夏さんは明日ってなにか予定はありますか?』

「いえ、予定はないですが…。」

『ああ!それはよかった。明日12:00に僕のお店に集合してください。一緒にランチしましょう!では!』

「っえ!ちょっと!」

ぶつっと立夏の返答を聞かず、通話がきれた。耳元ではそのまま通話がきれた音だけが広がる。立花に折り返し電話をかけたが電源を切られているのか機械的なアナウンスが流れた。立夏の思考回路はそのままフリーズしてしまい、どうやって自分が帰ってきたのかわからないまま立夏は自宅についた。


立夏は腹をくくった。

そして、明日の立花の驚く顔を思い浮かべると、立夏はほくそ微笑んだ。


(やってやろうじゃないか…!リスをなめんなよ!)


今まさにリスとライオンの攻防戦のゴングが鳴り響き、始まろうとしている。

はてさて、どちらが勝つのか負けるのか。それは二人にしかわかならない。

かなり歯切れが悪く申し訳ございません。

不本意ではございますがこの物語りは一旦ここで閉じようかと思います。

読了誠にありがとうございました。

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