境界人
なんとなく。
「お前のせいだぞ」
「悪かったよ」
正樹は激怒している。
謝って済む問題じゃないが……
「今日は彼女とデートの約束があったんだ」
「……」
「いつもより早く公園の噴水の前にあるベンチで待ち合わせしていたんだ。」
「ああ……」
正樹は泣いている。
「お前があんなことをしなければ、俺は俺のままでいれたんだ」
「すまん……」
「謝ってすむものか」
「すまん……]
俺は平謝りを続けた。それしかできなかった。
「お前のせいで、俺は彼女の視界に入らなかった。」
「申し訳ない……、お前が暇そうにしているからつい、あんなことを」
「しかもだ、お前がやったことのせいで、俺は次に彼女と会う気になれないんだ、どうしてくれる? 」
「気にするな。彼女はお前に会えなかったのだろ? なら、次は俺とお前と一部の者のしか知られていない秘密を、彼女に打ち明けて、俺たちの仲間にひきいれよう」
「それもそうだが……しっかり説明すれば、分かってくれるだろうか。 」
正樹は言葉を切ったあと、逡巡するように間をあけた後、重い口を開いた。
「それに、……が消えたくらいで……俺を見限るなら」
「まあ、深く考えすぎるな。色々言ったが、選択肢はいくつもある。お前からもぎ取った事は、本当に悪かったと思っているが、これを機会に、彼女との関係を見つめなおすのもいいかもしれないな」
私はそこまでいうと、正樹の照り輝く頭にカツラをしっかり取り付けてやった。