当たり前の事
業火、叫び狂う嵐
そんなのは当然のことだが、
空飛ぶ竜の仕業でもなく、能力者の念力でもなく
自らその生を殺めてしまうとは
なんと哀れな生き物なのだろう
だがしかし私は確かに、
そこへ手を伸ばしたのだ
世界なんて、単純に言えば、つまらない世界なのかもな。
なんて、意味の分からない事を呟いてる様じゃ、全然人生を謳歌していないのだろうな。
なんとも退屈な世界に生まれたものだ。
まあ退屈ってのが一番幸せかも知んないな。
幸せを噛み締めてるだけ、マシか。
少なくとも、今隣で嘲笑に似た笑顔を見せている少年を見るだけで、何でもいいやって思える。
そんな人生で良いんだと。そう思っておこう。
しかしこいつも、随分と聞き分けの悪いガキになったもんだ。
イライラしてくる。頭にヤカンをのせたら沸騰しそうだ。
まあ…数年前よりは、マシになったよなぁ。
「リア、買い物行こうよー?食材が足んないよ〜」
その食材はほとんどお前が食べたんだろ、と育ち盛りな少年に言えるわけもなく、しぶしぶ外に連れて行く。
食材を焦がしちまったのは悪かったが、それで買い物に付き合わされるってのは、何処かめんどい事だよな。
代償っていうのは、本当に面倒だ。
そして、外に出た瞬間に動く影をみてはしゃいでいるまだまだ子供な少年を見て、ため息をつくのさ。
影は空飛ぶ竜が作ってる。そう、ここはファンタジーの世界。
魔法なんて当たり前で、竜なんて伝説上の生き物も、当たり前に人と共存している。
元は人間だけの世界だったが、いつの間にか竜や能力者などが混じってしまったのは、素晴らしい事なのか?
褒めるならそれを短時間で受け止め当たり前にした人間を褒めてくれ。
そしてあたしの様な存在が、当たり前になっていくのも…少しくらい驚いてくれても良いのにな。
申し遅れたが、あたしの名はリア・アムール。金髪をポニーテールにして、そんでもってカウガール(?)的な服を身にまとった女子だ。性格と口調から女子っぽくないと言われがちだが、女子だぞ。
そして今自分の目の前にいる少年が、フィル・ミラディルといって、青と金のオッドアイが特徴の、女子っぽい奴。でもこいつは男で、しかも当たり前になってしまった能力者ってやつ。光を操れるんだとさ。話し方がいちいち相手を小馬鹿にしてるような、光属性のくせに闇を秘めてるのかとか思うくらい話し方が幼く、そしてムカつく野郎だ。
まあこんな奴でも過去は可哀想だ。両親を失ったんだとよ。まあ深読みする気はねぇが、同情心からか、私が親代わりっていうか、姉になってやらなきゃなって思ってる。
まあこんな話は置いておいて、ひとまずとあるモールの食材売り場に着いたわけだが、
またか、あいつがどっかへ行っちまった。
探すのに一苦労だ。あいつはすぐ勝手に行動する。
あれほど嘲笑した大人びた発言をする野郎だが、所詮はただの子供、呆れてくる。
とりあえず思い当たる所を探す。人々に話しかけてみる。
なんとまあこの世界の人々は冷徹で、誰も教えてくれること以前に振り返ってもしてくれない。
まあそんな世界になってしまったんだ。当たり前っていうのは怖いものだ。誰か一人が言い出すとそれが広まり、常識となる。そうちょっと冷静に考えろよ、明らかに不条理なことばかりだろ?とは思えるが、人々は当たり前になる前の世界をまあ見事に忘れてしまっている。心が折れるぜ。
結局自力で探すことにした。本当にあいつには手間がかかる。
一人ってのは中々気分がいい時もあるが、人間はやはり誰かが居ないとやっていけないのだろう。私だって…多分そうだ。
フィルがいねぇと何処か落ち着かない。
そんなんでいいんだよな?それが正解か?
まあ…今は何も考えないでいよう。
さっきからぐちぐち言いながらモールを歩き回っているのだが、散々探した挙句見つけた場所が食材売り場から遠く離れたモールの屋上だぞ?
そりゃあ誰でも腹が立つ。
「フィル!何一人でほっつき歩いてんだ!離れんなって何度も…」
そう怒鳴った瞬間、フィルがこっちを見てニコッと微笑んだ。
「リア!やっと分かったよ!ありがとう、ねぇ…!」
不思議なほどにあたしは訳も分からない状況に目を見開いていた。
なぜ、お礼を言われなきゃなんねーんだ?
空は夕日が赤く燃え、フィルの金髪をオレンジ色に染めていた。何故か心地よい風が吹いている。
あたしたちの他には誰もいない。
フィルは涙を流して、こちらに歩み寄った。
動揺しているのか?身体が動かない。
何処からか錆び臭い匂いがした。夕焼けがだんだん近づいてくる。
オレンジの光が、あたしの視界に広がる。
ああ、分かった。
もう少し早くに気づくべきだった。
長い夢だったのだ。
あたしがこの世界を、当たり前に見過ぎていたんだ。
誰もいない。寒い。
目の前の赤い色が怖い。
身体が震えてる。これは寒さのせい?それとも…
あの日、僕は目の前で命を落とす人を見た。
馴染みのある人だったから、僕は正気でいられなかった。
空飛ぶ竜の仕業でもなく、能力者の念力でもなく
自らその生を殺めてしまうとは
なんと哀れな生き物なのだろう
そう思った。
確かにそこに、
「当たり前」は存在していたと思っていた。
けど僕は確かに
当たり前じゃない光景を見てしまっていたのだ。
その日から、僕は僕の中の創作世界に浸ったんだ。
リア・アムールという機械を作り出してさ、その子は太陽光電池式だったから、僕が生まれつき持っていた光を使ってさ、動かしたんだ。
現実はそうなのさ。
けど僕はその長い夢で、リアは人間だと思い込んだ。
そうして、その長い夢の中で、自分の悲しみを埋めた。
そして、忘れてしまっていたのさ。
そうして再び思い出した。
きっかけはあの夕日。
リアの髪の色と似てたからさ、何となくボーと見てたんだけど、
それって錆び付いた色だよね?
そう思った瞬間、思い出した。
君は随分と長い年月、動いてくれていたよね。
ごめんね、
「夢(当たり前)」に、浸ってしまっていたよ。
目の前で今止まったガラクタに、僕は微笑みかけるんだ。
今までありがとうって。
リアは、いいお姉さんだったよ。
僕をずっと励ましてくれたんだ。
そのボロボロの体で、優しく包み込んでくれてたんだ。
だから僕は、自立することが出来たんだ。
悲しみを、受け入れるようになれたんだ。
ありがとう、本当に、ありがとう。
それが正解だよ、リア。
それが、君の愛情、「愛」だったんだよ。
世の中は、もう当たり前じゃない。
そうだよね、リア。
アムール
フランス語で、「愛・恋」の意味。
まとめand解説
この小説はtwitterを通じての企画小説です!
屋上蛍さん (@megumi18kei)今回の企画乗っていだだきありがとうございます!!
今回の企画で印象に残ったのは、初めてよその子さんを使っての小説を書かせて頂くと言う事で、その子のキャラ設定とか見てて興奮していた所ですかねw
フィル君可愛いです!あれで男なんですよね…wあーやっぱり可愛いです!女の子の格好さしたい(^q^)
フィル君を動かすのは難しくて、本編でちゃんと出来てるかな…とは心配ですが、Twitter上でそう言うと屋上さん心優しくて…すごく励まされました(T^T)ありがとうございます!
リアは1から作ったオリキャラで、フィル君に合わせて作ったキャラです。が、ちゃんとお姉さんしてたかなって思いますw
なんだろ…本編では心の中の言葉が多かったので二人の会話が皆無に近いほど無いんですよね…ごめんなさい。
ほのぼの系にしようと思ったらすごくシリアスになってしまいました…それについては本当にごめんなさいです…
あと設定も色々変えてすみませんでした…
小説を書いていて楽しかったのは、リアさんの呆れ用ですねw想像でフィル君とリアさんの普段の生活が見て取れるように書いたつもりです。つもりです。
見どころを言うと、リアからフィル君に目線が変わるところですかね。リアさん…(T^T)
てかフィル君に機械を作れるほどの腕があったのかと思うとちょっと笑えてきますがw
まあとにかく、見苦しい所があると思います(思いました)が、楽しく書けたのでそれはとても楽しかったです!
屋上蛍さん、本当にありがとうございました!
実音より
小説の解説
世界観はファンタジー。普通世界とあまり変わらないが、変わっている所は竜が空を飛び人間と共存している事と、火、水、風、光、闇のいずれかを操れる能力者と呼ばれる人間が存在する事。
元は普通世界だったが、何十年か前に突然竜と能力者が出現した。
だか人々はそれを受け入れ、そして当たり前にしていった。
今回の小説のテーマはそのまま「当たり前の事」
人物と時の流れ
フィル・ミラディルは幼い頃に両親を事故で亡くす。冒頭の「空飛ぶ竜の仕業でもなく、能力者の念力でもなく 自らその生を殺めてしまうとは」がヒント。
フィルはその時、自らの悲しみを隠すため、両親の代わりになる機械を作った。そうして出来たのが「リア・アムール」である。
リアは機械なので自我が無い。それをフィルはフィルの脳内でリアに自我を持たせ、一緒に住む事にする。なのでリアのセリフは全てフィルの妄想である。
そうしてフィルの脳内で「当たり前」が出来た。「夢」とも言っている。
フィルの中の当たり前はリアと暮らしている事。それが永遠に続くと思っていた。
だがしかし、屋上の夕日を見た事により少しずつ過去の思い出を思い出していく。
序盤のリアのセリフ、それは全てフィルの妄想。現実はフィルは機械のリアと共に屋上へ登り、そこで2人で夕日を眺めていた。フィルが夕日を眺めている時に妄想していたのが序盤のリアのセリフである。
だからリアがフィルを探すシーンは実は現実では存在しない。なのでリアが人々に話しかけた時に人々に無視された。
リアのセリフ「そしてあたしの様な存在が、当たり前になっていくのも…少しくらい驚いてくれても良いのにな。」がヒントでもある。リアが実は自我を持っていない機械だと思わせる部分。
リアの妄想時、リアが何度かフィルや自分の過去を振り返るシーンがある。その時からフィルは徐々に過去の記憶を思い出していた。
そして妄想の中でリアがずっとフィルを励まし続けていた。フィルの妄想内で、リアはフィルに愛情を注ぎ続けていた。
だがそれは現実で言うと自分を励ましている行為に過ぎない。リアという人格は現実世界では存在しないのだから。
そして妄想から目を覚ました時、リアは既に錆び、動かなくなっていた。
フィルはやっと自分がずっと妄想の世界にいた事を思い出し、そしてリアに感謝と別れを告げる。
現実世界はフィルの創作世界(妄想の世界)で言う「当たり前じゃない世界」であった。
そうして、フィルは現実世界で自立し、世界の「当たり前の事」を受け入れる。
以上です。
それを踏まえてもう一回読むと謎が明らかになるのではと思います。
それでは、これにて失礼します!
読んでいただきありがとうございました。




