04
押し開いた外扉に対し、内側のそれは横へ、自動で開く。
明るく照らされた内部は円筒形。十人も入れば窮屈になりそうな広さだが、他に出入り口はない。
地上部から浅間の最下層まで、長距離を直通で繋ぐエレベーターだ。
ヴィオレは棚から数少ない荷物を取り出すと、そのままエレベーターに乗り込んだ。
人の出入りを感知すると、エレベーターの扉が自動で閉まり、移動を開始する。内臓を持ち上げられるような感覚。景色はなにも変わらないものの、ヴィオレを乗せた鉄の箱は確実に降下していた。
数十秒ほど不快感を耐えると、浅間の下層に到着して扉が開く。今まで狭苦しい空間が続いたが、ようやく広い場所に出た。
研究所らしく白を基調にした内装は、見るものに清潔感よりも潔癖な印象を与える。行きかう人々も多くは白衣をまとっていて、それ以外は濃紺のスーツを着ているのが大半を占める。前者はハイジアを管理し、後者はハイジアを運用する部類の人間だ。
素裸のハイジアを気に留める人間は、ここにはいない。故に衣服が用意されているはずもなく、代わりに無線機器などの備品やDNAサンプルを回収するための窓口が、エレベーターの隣に設置されている。
ヴィオレは地上から持ってきたものを全て窓口に差し出すと、裸のまま廊下を歩きだした。リノリウムの床が足裏に貼りつき、ぺたぺたと気の抜けた足音が鳴る。
角を二度も曲がれば、科学者たちの研究室が集まる区画へ出る。研究所の潔癖さはここでもいかんなく発揮され、無個性な扉の群れが廊下の両側に並んでいる。
左手側、数えて八番目の扉が、ヴィオレの目的地だ。
御堂、とだけ書かれたドアプレートを確認し、ノックしてから入室する。
「ヴィオレ、戻りました」