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ハイランド・ハイジア  作者: 射月アキラ
第4章
33/55

03

 びくりと足を止めた御堂は、なにを言おうか迷っているようだった。疑問が最初に出てこないということは、おそらくレゾンから全て聞いたのだろう。ヴィオレは適当に推測したあと、約束は守れないなと頭の片隅で思った。

 みんなが浅間に戻ってきたら、御堂の研究室に行く。ただそれだけのことも、今のヴィオレにはひどく難しい。

「なんで会いにきたの?」

 不快感は隠さなかった。

 今はレゾンの声を聞きたくないし、御堂の顔も見たくない。そんなことは二人とも分かっているはずだった。

「ペストが、出たからだ」

「そう」

「浅間の中に」

「……へぇ」

 そんなこともあるんだ、と無責任に続けてみせると、御堂は驚いた顔をした。

「わざわざ地下を掘り進んでくるなんて、物好きなペストもいるんだね」

「そんなことを言ってる場合じゃ──」

「なんで?」

 はぐらかすつもりはない。

 ヴィオレからすれば、これはまっとうな疑問だった。

「ペストが怖いの? 浅間を守りたいの? 死にたくない? 別にどれでもいいけど、そんなにハイジアにペストを倒してもらいたいんだったら、ちゃんと作ればよかったのに」

 分からない。

 わざと低いスペックのハイジアを作っておきながら、前線に送り出す理由が。

 意図的に作った失敗作に、すんなり自分の命を預ける神経が。

「私はちゃんと働いてきた。でも、ペストを倒したくらいじゃあ、誰も私のことを認めてくれない。今回の一匹だって同じでしょ。私が出るときなんて、大抵は塔の近くまでペストが接近したときで、今の状況と大して変わらない。私が出なければ浅間にダメージがあったかもしれないのに、私の扱いは失敗作のままじゃない」

 御堂が苦々しく表情を歪めるのを、ヴィオレは妙に凪いだ心で見つめていた。

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