表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイランド・ハイジア  作者: 射月アキラ
第2章
23/55

19

 これほど音声が乱れていながら、金属製の球体に変化がまるでないのがむしろ不気味だ。いっそガタガタと震えてくれれば、レゾンがそこにいるものだと認識できるはずなのに。

「──ヴィオレをドクター・御堂に託したのは私の判断だ」

 突然現れた御堂の名に、ヴィオレはすぐさま立ちあがった。

 なにも考えずに力を入れた右足首が鈍く痛む。テーピングの圧迫も、今は煩わしいものでしかなかった。

「なんの話を、してるの……レゾン」

「ヴィオレをハイジアにするとき、私は封印計画の説明と共にヴィオレの必要スペックについて説明した。ハイジアをヒトとして扱わない計画に、ドクター・御堂が反発することを理解していながら、私はその人選を覆さなかった」

 足が震える。

 思わずヴィオレは柱へ手をついた。そうでもしなければ立っていられない。

 御堂祐樹は唯一ハイジアを人間扱いする科学者だ。そんなことは下層の研究所内では当たり前の認識で、当然レゾンの認識もそうだっただろう。

「つまり、私は……私が失敗作になるのは、決まってたことだったの?」

「ドクター・御堂が私の計画を無視する確率は六七パーセントだった。それでも私が彼にヴィオレを託したのは、計画までの間、少しでも大切に扱ってくれる科学者の元に、送ってやりたかったからだ──」

 ヴィオレはなにも言い返せなかった。

 言葉を失っていた。寄る辺を失っていた。立っている地面すら崩れていきそうだった。

 ヴィオレが失敗作になってしまったのは、どうすることもできない失敗の積み重ねではなかったのだ。

「すまない、ヴィオレ。私の、独りよがりな、自己満足だ」

 ヴィオレは金属球から目を反らした。

 自分が失敗作であることは、仕方がないと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ