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ハイランド・ハイジア  作者: 射月アキラ
第2章
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13

 科学者たちが猛烈に反対していた──と、かつてレゾンはヴィオレに漏らしたことがある。ペストや放射能の危険を顧みず見張り台で「仕事」をしているのは、浅間でも上層部に暮らす貧困層だからだ。見張り台での汚染だけでなく、地中に染みこむ雨水からの汚染も浅間の上層では問題になっている。浅間が下層に重要機関を集中させているのはそのためだった。

 そんな上層で、しかも見張り台で発見された子供が「健康体」であるはずはない。科学者たちの主張は、おおむねそのような内容だったという。

「そういえば、足の調子は?」

 スピーカーを復帰させたレゾンが、唐突に問う。

 ヴィオレも、今度は呆けた声を出さずに済んだ。御堂に気づかれた以上、浅間の電気系統を掌握するレゾンがヴィオレの怪我を感知していないはずがない。

「大丈夫だよ、処置はしてもらったし」

「……ドクター・御堂か」

 合成音声のくせに、どこか苦々しげにレゾンは言った。

 人工知能たるレゾンは、自ら人間と接触しようとはしない。緊急事態の伝達か、人間からのアプローチがあったときにようやくアウトプット装置を起動するくらいで、ヴィオレに対するように他愛ない会話をするのは稀なことだ。

 だから、レゾンと御堂の間に、それほど深い関係はない。二者は人工知能と科学者という関係しか持っていないし、深める機会も存在し得ないだろう。

 それでも口調に変化が及ぶのは、多少なりとも意識しているからなのだろうか。

 気にしていない素振りで、ヴィオレは適当に会話を続ける。

「捻挫だって」

「そうか。無理はしない方がいい。癖がつく」

「ここまで下りて来るくらいなら、別にいいよね?」

「来てから言うな。──まぁ、負担がかかっていないなら問題はないが」

 レゾンはヴィオレに、決して「来るな」と言わない。

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