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携帯の画面が光る。暗い部屋だからか眩しい。
「もしもし?どうした」
電話の相手は加地だった。
「俺思ったんだけどさ、中学まで勇人陸上してたろ?時期的には小学校あたりだと思うんだけど靴のこと覚えてる?」
特にやりたいスポーツが無かった勇人はただひたすら走っていた時期がある。小一から卒業まで毎朝とは言わないが早く起きて走っていた。日が昇るにつれ胸の鼓動が高鳴っていくことに無趣味な勇人は充実感を得ていた。
「はぁ・・はぁ・・」
折り返し地点は街の奥に日が昇る海が見えるこの場所、いつも誰もこないこの場所は勇人だけの物だった。
「はぁ・・はぁ・・ふぅ」
ペタリとベンチに座るとしばらく日の出を見つめていた。足に違和感を感じるまでは。
靴を見るとゴムが焼けたようにどろどろになっていた。しかしそれに熱はなくまるで生きているようにウジュウジュとうごめいている。
その日の出来事をきっかけに朝のランニングはしなくなった。父の勧めで入部した陸上部も中学卒業と共に興味を完全に失っていた。
「あの靴まだ置いてある?」
「気持ち悪くて捨てられなかったなぁ」
「まぁ気になってな。じゃっ」
唐突に電話を切られた。まぁ言いたい事は分かる。
当時から家具などほとんど変わっていない。タンスを開け袋につめられた靴をとりだした。
「・・・あれ?」
見るとただ少し汚れただけの靴だった。
「勘違いだったのか・・そういえば最近走ってないな」
目覚ましを五時にセットするとその日は寝た。
翌日五時に目を覚ました。
「・・・うぐ・・寝たりない」
一人で愚痴を吐きながら着替えて外に出た。もう少し明るい景色と歩いている老夫婦達があの頃と違う。新しさを感じながら走り始めた。部活の甲斐あってかあの頃のようにすぐに息が上がることはなかった、しかしあの日の景色を前にした胸の鼓動は変わっていない。
折り返し地点に着くと綺麗な朝日が昇っていた。
「これだ・・このためだ」
ドクン・・。
足にあの日と同じ違和感を感じた。しかし見ても何もなっていない。
大会の集合時間、以前として能力の謎は解けていなかった。




