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滋賀県警本部
エリスと小鳥が待ち構える中、その車列は前を走る大通りに停車した。
大型バスの扉が開き、出てくるのは
「ビショップ・・・僧侶か」
誰しもが高齢で、袈裟の種類、色もそれぞれ。
後ろを追いかけてきたレパードが、バスを追い越して、白いKeiの横に停車する。
その車からも、1人の若い僧侶。
「貴方が姉ヶ崎あやめさんですね?」
車から降りてきたあやめに、そう言って近づく。
「そうです。このたびは協力、感謝しています」
「迷う魂を成仏させたい気持ちは、全ての宗派を超えて、同じですから」
状況がイマイチつかめていないのは、大介。
「これは、一体・・・」
すると、小鳥が近づいて
「久しぶりね。信義さん」
「おおっ!2か月ぶりかね、小鳥君!」
手を振ってこたえる、大介と同じくらい若い、男性僧侶。
「小鳥君。彼は?」
「富田信義僧侶。京都・錠光寺の僧にして、我が姉ヶ崎小鳥公認ファンクラブ会員1号」
「ファンクラブ!?」
「別に驚くことないでしょ?」
驚くのが、普通の反応である。
そんなもの、アニメじゃあるまいし。
「もともと5人だけの非公認サークルで、私が富田さんと仕事をして、このファンクラブの事実を知ってね。そんで私公認にしたの。
ラインのサークルで会員を募っていって、今は・・・30人程度かな?
まあ、悪くないって思っているし、こうして仕事でも、横のつながりで役に立っているから」
しかし、よく考えると、大介は妙に納得できた。
確かに小鳥は、可愛い少女だ。そして型破りな巫女。ある種のアイドル性を持っていてもおかしくはない。
そのアイドルに惹きつけられた僧侶や陰陽師。彼らと交流を持って、ギブアンドテイクとしているのだろう。
「で、今回は何を?」
「あのニンギョウを倒す条件。それは怨念の成仏。
しかし私は巫女であり陰陽師。霊を封じることはできても、成仏はできない」
「そこで僧侶を」
すると富田は言う。
「ただの僧侶ではありませんよ。いくつもの修行と場数を積んだ、徳の高いお坊さんです」
「そうか。だからみなさん高齢で」
「最初は、1宗派に絞ってくれって注文が来たんですが、徳の高い僧侶は数に限りがありますから、いくつかの宗派に拡大して、協力者を募ったんです」
そして、小鳥との仕事の話に入った。
「富田さん。人数は?」
「総勢35名」
「宗派は?細かく言って」
「真言宗仏光寺派、知恩院派浄土宗、日蓮宗久遠寺総本山系統」
「流石」
小鳥は、姉のもとへ。
「あや姉。琵琶湖汽船に問い合わせて、小型遊覧船を用意できないか、聞いてみて?」
「分かった」
あやめがケータイを取り出し、何かを放し始めると同じころ、県警の捜査員たちが、僧侶を県警本部へと案内していたのだった。
「頼むよ」
「任せてください」
大介の手が、小鳥の小さい肩をたたいた。
最初で最後の作戦、その準備は始まったばかりだ。




