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 10月4日 AM2:57

 滋賀県長浜市 黒壁スクエア

 

 駅東側にある銀行跡を利用したガラスミュージアムを中心とした商店街。地域活性化の手本として国内で注目を集める場所である。

 挿絵(By みてみん)

 人のいなくなった深夜の観光地にパトカーが集結した。商店街入り口から2ブロック離れた駐車場で囲まれていたのは、6台の違法改造バイク。車体から放たれるチカチカしたLEDにマフラーからあふれるやかましいトルク音。

 目的はこの車ではない。というより車の持ち主が見当たらないし、乱雑に倒されたバイクにはおびただしい血痕が飛び散り、アスファルトに引きずった跡。そこに刻まれた鮮血は道路を横断し、一直線に黒壁スクエアへ。

 まるで案内をするかの如く途切れた血の先には、放置された若者の死体。男性7人女性3人、全員鋭利な刃物で心臓を一突きにされ、店の軒先に並べられていた。全員場所はバラバラ。

 「これが致命傷の様です」

 碇警部は鑑識から説明を受けていた。

 「しかし、むごいな・・・腹部にも刺し傷が」

 「どうやら、死んだ後に刺されたものかと」

 「はあ・・・しかし、どうしてこんな・・・」

 碇は気付いた。警官がこちらを見ては下を向く。

 「こら!さっさと仕事をせんか!」

 駆け付けた加島が言う。

 「目撃者、いません。近隣住民は、暴走族の抗争かと思ったって」

 「レッドスパルタの滅亡で、暴走族の減少に拍車がかかったって言うのに・・・」

 「それから全員、今朝の事もあって怖がっている様です」

 耳打ちで上司に伝える。

 「通り魔の水死体か?」

 「ええ。殺し足りない彼が蘇ったって」

 「馬鹿馬鹿しい。奴はフレディでもジェイソンでもない。ただの人間だ。

  すぐに、彼らを動かせ。血まみれの黒壁スクエアを観光客に見せる気か?」

 「分かりました」

 立ち去る加島を首を横に振りながら見送ると、無線が入る。

 ―――長浜タワーで殺人事件発生!現場状況からして、同一犯の可能性。各移動は・・・

 碇は駐車場へ戻ると、パトカーに飛び乗った。

 事件現場から南へ1ブロック。JR長浜駅東口から一直線に伸びるメインストリートにある古ぼけた奇抜なビルディング。

 町の名士が建立した長浜タワービル。アンテナの生えた5階建てのビルは、最上階が展望台で以下4階が雑居フロアという構造。現在は老朽化のため展望台は閉鎖。入居するのは1階に2つの喫茶店のみ。 

 スペル間違いの「NAGAHAMA TOWER BILL」の看板を赤いランプが照らし出す。

 路上にはおびただしい血の中に制服を着た3人の死体。既に事切れている。

 2人は巡回中の警官であると判明。拳銃や警棒に手を触れる前に胸を刺されたのだろう。

 「もう1人は、誰だ?」

 制服警官の1人が言う。

 「この服は、長浜交通の制服ですね。タクシーの運転手の可能性が」

 「タクシーが見当たらないということは、車を奪ったか」

 彼も首を切られただけでなく、腹部に刺し傷。

 「大至急、長浜市周辺に警戒態勢を敷きます」

 そう言って、加島がパトカーへ向かって走っていく。

 背広の運転免許証で、被害者の身元が割れた。すぐに聞き込み先から駆け付けた柴村に、配車センターへ連絡を取るよう伝えた。

 すると

 「警部。彼の乗る25号車のGPSが、先程途切れたと」

 「場所は?」

 「国道8号長浜バイパス、長浜自動車学校付近です。車はどうやら米原方向へ南下していたみたいです」

 「よし、周辺に検問を敷くと共に、GBSの消えた自動車学校周辺を捜索するんだ!」

 「了解」

 そう伝える碇にも恐怖はあった。これだけ残忍なことを続けてやれる人間がいるのか?

 

 知らせを受け長浜署と米原署が非常警戒を張ったものの、肝心の長浜交通25号車の行方はつかめず、夜が明けていくのだった。

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