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ミシガン上空。駆けつけた2機のUH-60Tが、ささごいの援護に回った。
しつこいR22を、巧みな連係プレーで追いやる。
―――“えどばし”から“ささごい”。雑魚はこっちが何とかする。
そのまま、ミシガンを追い続けろ。
「了解。感謝する」
R22に急接近しつつ、後ろから横から追いやる2機のUH-60T。
ささごいのパイロットは感謝を口にし、ミシガンへと走る。
ミシガン船内では、小鳥が操舵席に向かって走り続ける。
立ちはだかる信者を、ある人は頭突き、ある人は鳩尾に一発入れて、倒していく。
その頃1階では、ルキーミが部屋に入ってきた。
「何をしているんだ?」
静止する信者に、彼女は話しかけた。
「すみません。あの・・・地雷が・・・」
「地雷だと!?」
「動いたら、爆発します」
ルキーミは、その言葉が聞こえないのか、そのまま足元に転がるサッカーボールチョコのもとに、歩み寄ると、それを1つつまんで持ち上げた。
「ルキーミ様!」
「よく見ろ馬鹿者!ただのチョコレートだ!」
「じゃあ・・・」
「水上バイクの爆破は私も見た。恐らくあれだけが本物で、ここに転がっているのはブラフなのさ」
封印が解かれたかのように動き出した信者。
「あのガキ!生かしておくものか!」
ルキーミも苦虫を噛むが如くチョコレートを口に放り噛み砕くと、叫んだ。
「あの女を殺せ!」
並走するあやめのクルーザー。
そこから見えた。1階の船室から飛び出す男たちと女性。
「あれがルキーミ?ウチの大学の女子生徒にそっくりじゃない?」
「あの女は偽物だ!構うことはない」
「小鳥の後を追っているわ」
一方の小鳥は最上階、操舵室に到達した。
このままでは、すぐに敵が操舵室に到達する。
「小鳥・・・香葉子!この船をミシガンに寄せて!」
「それはいいが・・・」
言葉を濁す彼女。
「ビアンカとの距離が狭まっている。今近づけたら最後、助けることはできない!」
あやめはビアンカの方を見た。
気づいた時には、船体が大きく、大きく迫ってくる。
ビアンカは彼女から見て斜め左に。
「考えられる結末は?」
「このまま走れば、ミシガンの左舷にビアンカは突っ込む形になるわね。恐らくミシガンは転覆、幸運としても浸水は避けられないわ」
だが、今のところ、ビアンカが方向を変える気配はない。
「エリスは何をしているんだ!」
叫ぶ大介。続けてあやめは言う。
「援護を頼むわ」
「乗り込む気か?無茶だぜ」
「あのルキーミって女だけでも止められれば・・・」
「残りのメンバーはどうする?ソリュアとデュオって呼ばれていた男たちが現れたら」
それを聞いて躊躇するあやめ。
彼らが襲ってこない保障はない。
歯を食いしばり、拳を握って傍観するしかないのか?
その時
「ぐわっ!」
耳鳴りのような音とともに、凄まじい閃光がミシガンから立ち上ったのだ。
小鳥の道具が、使われたのか。
「なんだ今の?まさか、スタングレネードか?」
「ちゃんと動いたみたいね。
大介、グライダーを持ってきて!それから油性ペン」
「分かった」
あやめの足元、船室へと消える大介。
数秒でグライダーを片手に戻ってきた。
「どうするよ?」
操舵席から飛び降りたあやめは、ふんだくるようにグライダーとペンを大介の手から取ると、何かを翼の裏に書き、風下である船尾に向かって飛ばした。
ブーメランの如く、旋回しながら持ち主の元へと帰って行ったのだ。
「ありゃま・・・」
驚嘆する大介をよそに、あやめはリオに無線をつなげた。
彼女の乗るささごいは、ミシガンの進行方向からして、右船尾後方を飛行していた。
「リオさん。頼まれてくれるかしら?」




