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66

 すぐさま大介は自身のスマホで、隼を呼び出した。

 「親父!」

 ―――ジャックされたミシガンを追っているそうだな。

   間もなく、水上警察隊とリオの乗ったヘリが合流する。それまで頑張ってくれ。

 「そう悠長なことは言ってられないぜ!連中はニンギョウをおびき出すつもりだ」

 ―――おびき出すって・・・

 「ニンギョウが異端者の血を望んで現れる。教団はニンギョウの行動を、そう解釈しているみたいなんだ。人質を殺すか、最悪、大津港に激突させる可能性がある!」

 ―――何だと!?

 「応援をもっとよこしてくれ。それから、リオさんに連絡してデュオ、ルキーミ、ソリュアの3人の身元を至急照会」

 ―――デュオならば身元が判明している。裏社会の人間で、拷問に精通した人物だ。副部長に暴行を加えたのも、そいつの可能性が高い。

   そうか、連中は端から人質を、殺す気だな!

 「そんな・・・あやめ!」

 叫びに、彼女は答えた。

 「何?」 

 「メンバーの1人が割れた。デュオという人物だ。拷問に精通した裏社会の人間で、緒方副部長をなぶった犯人だ」

 「参ったわね」

 そんな中、赤い外輪が彼女らに迫る。

 追いついた!

 左から船首に回り込んで、右へ。そして再び旋回。嘗め回すようにミシガンの周りを走った後、スピードを落として並走する。

 「少し、距離を取って!」

 左へ舵を切った、瞬間!

 甲板にぞろぞろと現れる白スーツ。その手にはUZIやベレッタと、多種多様な重火器が。

 有無を言わせず、一斉発射!

 「撃ってきやがった!」

 傾けた船体、その大きな面積が縦になった。

 激しい爆音に、耳がつんざく。

 「こらーっ!船に穴をあけるなー!」

 その音に負けずに叫ぶ香葉子。

 「早くやっつけてくれよ!」

 「あの銃弾の雨じゃ、頭を上げれば確実に殺される」

 「そのライフルなら・・・」

 「弾丸は2発しか残っていないの」

 「じゃあ、どうするの?このままじゃ、こっちが沈むよ!」

 もどかしさに下唇をかむ中

 「見ろ!」

 大介が叫んだ先、甲板に出ていた男が2人、銃を手から落とすと、腕を押さえながら倒れた。

 「どうして?」

 瞬間、3人の背後を飛び去るヘリコプター。

 青い機体が、晴天の空に輝く。

 「ささごい・・・リオさん!」

 「ようやく到着したってことね」

 見ると、機体から体を放り出したリオ、スコープのないチェイタックをミシガンに向けている。

 インペリアルシステム。その能力だから、上空から敵の持つ銃器に、ピンポイントで狙撃できたのだ。

 緋袴のポケットからイヤホンマイクを取り出すと、リオと交信する。

 「サンキュー、リオ」

 ―――どういたしまして。さっさとシスターを救い出しなさい。

 「言われずとも。リオはUZIを持った兵隊を重点的に。・・・大介、反撃よ」

 「よし!」

 ズボンに挟んだ大介の愛銃 CZ75-1改が、スカートをひる返し、レッグホルダーから取り出したあやめの愛銃 ワルサーP99が、同時に火を噴く。

 相手の攻勢には劣るが、それでも陰に隠れ銃撃を交わしながら、必死に引き金を引く。

 だが空からの応援は、攻勢をひっくり返すには充分すぎた。

 

 そのミシガンでは、信者たちが狼狽していた。

 「ぐはっ!」

 1人。UZIを持った人物は、全員やられた。

 「クソッ!UZI部隊が全滅した」

 「そ、そんな。上空から手だけをピンポイントに。あいつ、人間じゃねえ!!」

 船上の誰しもが、戦意を喪失し始めた。

 その時

 「やっと着いたか」

 ルキーミが空を見上げてつぶやいた。

 北東の空、そいつは現れた。


 上空を飛ぶUH-64T ささごい。

 インペリアルシステムを駆使するリオは、イヤホンマイクであやめと連絡を取り合い、狙撃を続ける。

 「UZIを持った奴は、全員倒したわ」

 ―――了解。後は何とかできそう。

 そこへ、パイロットの無線が乱入。

 ―――北東方向より、飛行機が接近。

 「県警のヘリ?」

 ―――いえ。ヘリなのですが、県警のそれより小さい機体です。

 「民間機?」

 ―――トクハンも、ロビンソン R66という機体を所有していますが、それだとしたら他県からの応援という可能性も。

 体を機内に戻し、中からその機体を確認した。

 確かに小さいが、こちらに近づいてくる白い機体。

 やっと全体が目視できたとき、アドレナリンが流れ、リオのリザードマンの血が動いた。

 ―――ロビンソン R22。やはり民間機ですかね?

 「いや違う!側面を見ろ!」

 そう、機体側面には萬蛇教のマーク。

 すぐにイヤホンマイクに叫んだ。

 「アヤ!あのカルト、ヘリなんて引っ張り出してきやがった!」

 ―――え?

 刹那

 「うわっ!」

 機体が揺れる。

 相手が接触ギリギリの距離にニアミスしてくる。R22はそのまま、小型機体を駆使して旋回すると、再びこちらに突っ込んでくる。

 すれ違い、潜り抜け、揚句に真正面で急上昇。

 バランスを崩したささごいは、湖面へと急転直下。すぐに機首を上げて、墜落を回避する。

 それでも、激しく付きまとう。

 ―――リオ!

 「アヤ。このハエを振り払わない事には、無理だ」

 ―――援護するわ!

 「ミシガンの方が先だ!」

 ―――それなら、大丈夫よ。

 直後、イヤホンから聞こえる、甲高いサイレン。

 琵琶湖を見下ろすと、ミシガンとクルーザーに向かって、白い尾を引く4隻の船。

 「水上警察隊か」

 内陸県であるにもかかわらず水上警察を唯一、常設している滋賀県警。その水上警察隊大津分駐所の部隊が到着したのだ。

 

 青く光る湖面を切り裂き、甲高いサイレンを鳴らして、中型船が航行するミシガンに迫る。

 「こちらは、滋賀県警水上警察隊だ!直ちに停止しなさい!」

 船外に設置されたスピーカーが叫び、甲板に立つ警官が銃を構える。

 船団はあやめの乗るクルーザーの後ろを航行。内スピードの出る2隻が、ミシガンの前に出た。

 その姿を確認すると、あやめはイヤホンマイクで指示を出す。

 「航行中の水上警察隊へ。連中は重火器で武装し、人質を躊躇なく殺害する恐れがある。

  相手をむやみに刺激せず、迅速に犯人を制圧されたし。

 ―――了解。直に湖西分駐所の船も到着します。

 通信を終えると、あやめは再びチェイタックを持ち上げ、上空に銃身を定める。

 ささごいの周囲を、ちょこまかと旋回し妨害するR22。

 旋回する度に、教団の金色のマークが光る。

 「そのマーク、悪趣味なのよ」 

 スコープから覗く目が、ヘリコプター後部、むき出しのエンジンを捉えた!

 「じゃあね」

 その瞬間、R22が突如ささごいのもとを離れ、こちらに飛んでくる。

 「なんだ?」

 クルーザーに近づいた時、むき出しのエンジン部分から細長の何かが落ちてきた。

 「やばい、手投げ弾だ!」

 「マジ!?」

 「伏せて!」

 途端に3人が伏せると、衝撃と共に水柱が立ち上がった!

 激しい揺れがクルーザーを揺らし、立ち上がることはおろか、顔を上げることすら。

 手投げ弾の被害は、傍を走る水上警察隊に降り注ぐ。

 運悪くも、湖西分駐所の3隻が合流した直後。

 「散開!散開しろ!」

 センターを走る船の警官が叫ぶ。

 あちらへこちらへ船団が散るが・・・

 「逃げろ!」

 声が聞こえたが最後、クルーザー後方を走っていた船が閃光と共に炎に包まれた。

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