表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/100

53

 挿絵(By みてみん)

 コンコース中央部でたむろする、白スーツたち3人。

 「彼女が?」と1人が言う。

 「間違いない。この作戦の全体総指揮はレイラス様と、その配下の野々市だ。

  配下の情報によれば、鈴江はビデオをとある人物に渡すと、サークルの副部長に言ったという。

  このまま張っていれば、彼女がビデオに、我々を導いてくれる」

 白スーツの男は、自信満々に。

 「ですが、そのビデオには何が?」と別の1人

 「俺も判らん。しかしそれは、この先起こる聖戦のための、大切な武器であるとレイラス様が申しておられた。それだけでも、十分価値があるとは思わんかね」

 「ええ。聖戦で死んでく、異端者の哀れな末路が目に浮かびますよ。

  しかし、彼女が何も接触しなかったら?」

 「その時は拷問でもして吐かせればいい。奴のようにな。

  ・・・あそこにいるカメラマン、わかるか?」

 白スーツは、交差点にいる一眼レフの小太りの男を指さす。

 「あいつはデュオと言ってな、教団一の拷問師だ。奴の手にかかれば、素人なんぞ数秒でゲロする」

 「そんな人物を出してまで・・・そのあやめとかいう刑事は、本当に危険なんでしょうか?」

 「さあ。レイラス様曰く、刑事であり大学生。しかも現場に巫女のコスプレで現れる変態だそうだ」

 不意に、誰かが声をかけた。

 「あの・・・」

 それは、福祉ビルの職員である若い女性。

 「何か?」白いスーツの男は聞く。

 「彼女から言伝を頼まれまして。

  貴方たちの待ち人は、その下にいる。青いレパードに乗って」

 「なにっ!?」

 白スーツ男は血相を変えて、傍の階段を駆け下りる。

 (青いレパード。レイラス様が言っていた、あやめとかいう刑事の愛車。まさか・・・)

 下にあるバスターミナル。そこを手分けして回ったが、該当する車はいなかった。

 「どういうことですかね?」

 瞬間、すべてを察した。

 「戻れ!これは罠だ!」


 一方、職員へ言伝をして別れた小鳥は、反対に福祉ビルへ向かって歩く。

 その様子をレンズ越しに監視していたカメラマンも、機材を持ち横断歩道を渡って、福祉ビルへ。

 (よし、道路を渡ったわね。

  3・・・2・・・1・・・GO!)

 瞬間、踵を返して、浜大津駅へ向けて全力疾走を始めた!

 スカートをひるがし、革靴を響かせ、ただ走る。

 その姿に福祉ビルにいた2人も呆気にとられたが、すぐに後を追い始める。

 白スーツの男たちが、所定位置に戻ると、すでに彼女はコンコースを走破し、改札をICカードをタッチと、軽やかに通過していった。

 「追え!追うんだ!」

 叫ぶ白スーツ。

 追跡する野郎共は、駅員の静止を振り切り、改札を飛び越える。

 発車ベルが鳴り響くホーム。今まさに、ドアを閉めんとする坂本行電車。

 (お願い!間に合って!)

 階段をひたすら走り、その願いは通じた。

 坂本行の電車は、まだ止まっていた。車体下部に、清涼飲料水のコマーシャルを纏った姿で。

 小鳥が飛び乗ると同時に

 シュー・・・ガタン。

 扉が閉まった。

 追跡者がつくころには、電車がホームから離れ、交差点へと向かう。

 「ぼやっとせずに、追わんかい!」

 遅れてきた白スーツが、檄を飛ばし、彼らはホームを飛び降りて、加速を始めた電車を追う。

 赤信号で車のいない交差点を、ゆっくり通過する。その後ろを追っかける哀れな男たち。

 だが

 「デュオ!電車を止めろ!」

 (しまった!)

 あの小太りのカメラマンが小走りに、ストロボを起動しカメラを構えながら、道路に向かう。

 フラッシュを使って、電車を急停車させる気だ。

 信号待ちの車を縫って、車道に出た!

 ---寺の梵鐘にも似た、低い音。

 反対方向からやってきた、石山寺行電車が、警笛を鳴らしたのだ。

 驚いた男は転倒。そのまま小鳥の乗る電車は、浜大津を離れ、段々と加速していく。反対に警笛を鳴らした電車が急停車。

 「危ないだろうが!」

 運転手の怒号を聞かず、デュオはその場を後に、立ち去る電車を見送るのだった。

 挿絵(By みてみん)

 「どうします、ソリュア?」

 彼は白スーツの男―ソリュアに、指示を仰いだ。

 「車を回せ。お前たち2人は坂本駅に先回りしろ。俺とデュオで、各駅を回る。

  鈴江の行動は?」

 「奴は、野洲から京都方面に移動していますよ。恐らくどこかで、2人は合流する」

 デュオの口元に、笑みを浮かべて。

 加えて、ソリュアはケータイを出した。

 「別働隊に連絡。“クリムゾン・ミシガン”始動。

  “全ては罪船と共に、緋色に染めよ”」

 

 

 一方、彼らから逃れた小鳥は、3駅先の皇子山駅で下車、傍のJR湖西線大津京駅へと走る。

 現代っ子だからできる匠の技、走りながらスマホ打ちをしながら。

 無論、読者の現代っ子は、くれぐれも真似してはいけない。危険だからだ。

 メールの相手は、鈴江。

 〈今、どこ?〉

 すぐに返信が来た。

 〈能登川駅です〉

 大津京駅に到着した彼女は、先程と同じくICカードで通過しながら、引き続きメールを。

 〈私も追われているわ。場所を変えましょう。

  守山駅で降りて。新しい集合場所は---〉

 ツインテールの女子校生は、息を切らせ近江塩津方面行のホームへと走るのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ