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14

 大学入口、教務棟地下1階にある医務室。

 そこのベッドに鈴江を寝かせると、服を脱がして体をタオルで拭う。

 依然、意識不明だ。

 救急車を呼ぼうとはするのだが、何故か電話が通じない。ケータイだけでなく固定電話もだ。

 「どうだ?」

 部屋に戻ってきたあやめと大介に、釘宮が聞いてきた。

 「ダメだ。学校中の電話が、119番に通じなくなってる」

 「私の方も、パトカーの無線がだめになってる。救急車を呼ぶことも、医師免許を持ってる横山刑事を呼ぶことすらもできないわ」

 「どうなってやがるんだ・・・鈴江君は?」

 「見ての通り。まだ、意識不明だ」

 大介は、ケータイを傍の空いたベッドに放り投げた。

 「どうにかしないと・・・死んだら、洒落にならん」

 その時、ケータイの着信音が響いた。あやめのケータイだ。

 「仲間か?」

 釘宮の目が輝いたが

 「妹からよ」

 その場に座った釘宮。あやめが電話に出た。

 「小鳥?ゴメン、用事が入って、今夜の晩御飯は一緒できないわ」

 たわいもない会話と、相槌。だが

 「え?」

 彼女は受話器を押えて、振り返った。

 「だれか、うめき声とか上げた?」

 「してない」

 あやめは再び受話器へ。すると

 ―――いい、よく聞いて!その部屋は危険よ。

 「危険って・・・」

 ―――もしかして、学校内で原因不明の異変みたいなの、起きてない?

 「そう言われると・・・」

 あやめは、鈴江のこと、学校の電話が119番につながらないことを話した。

 瞬間、向こうの声の語気が強くなる。

 ―――今からそっちに向かうわ。その部屋の周囲を封鎖して、誰も近づけないで!

  勿論、部屋からも誰も出ないように!

 「ちょっと、そんなのって―――」

 ―――いいから、言うとおり行動して!

 「分かった」

 あやめは電話を切ると、2人にこの部屋を出ないように伝えると、医務室の内線電話を使い心理学科の南條先生を呼んだ。

 すぐに教務棟地下1階を、“通気口の故障と修理”という名目で封鎖。

 後は、電話の主を待つだけ。


 1時間後。

 「なあ、遅くないか。つか、あやめの妹って、妖怪だったか?」

 壁にもたれかかった大介が、向こうの柱にかかった時計を見て呟いた。

 「そんな訳ないでしょ。小鳥は正真正銘の人間」

 「だったら、どうして俺たちを軟禁するんだ?

  これが妖怪関連だったら、君の方が専門家だろ?」

 あやめはベッドに腰掛けて言った。

 「これは妖怪でも、魔術師でもない。ISPが介入を困難とする“第3事態”よ」

 「それって?」

 「幽霊、心霊、亡霊。まあ、そんな類ね。

  人間へ精神レベルの攻撃を仕掛け、未練や怨恨をエネルギーに行動し攻撃する存在。

  ISPを始め各国は妖怪や魔術師の存在は認めてはいるけど、亡霊の存在は否定しているのが多数」

 「どうしてだ?」と釘宮

 「簡単な話よ。亡霊は、一部の人間にしか“視えない”から。

  その一方で、亡霊の存在を容認している国もあるわ。今のところ日本とバチカンの2か国だけ」

 「じゃあ、鈴江に亡霊が憑りついたと?」

 「そうなるでしょうね」

 (ということは、あの悪寒は亡霊の存在を察知したからか)

 ふと大介は思う。

 妖力を使って擬態化する妖怪を“視ること”ができる程の力があるのなら、亡霊を察知しても不思議ではない。

 だとして、大介には疑問が残る。

 彼女の義妹が介入する理由はどこにあるのか。

 「あら、大事なことを忘れているわよ」

 「?」

 「姉ヶ崎小鳥は、陰陽師を4代にわたって歴任した姉ヶ崎家の血を引いているのよ」

 「つまり」

 「彼女は、高校生陰陽師。亡霊が関わっているのなら、私より彼女がプロフェッショナルだから」

 そう言ったと同時、ドアが開き3人は身構えた。

 部屋に入る1人の少女。

 「紹介ありがとうね。あやねえ

 「こ、小鳥君?」

 「久しぶりですね。大介さん」

 中学生以来会っていなかった彼女の姿に、大介は驚きを隠せなかった。

 リボンで結ばれた小さな二つ結び、あやめと同じくらい大きく穏やかな瞳、紺色のセーラー。

 あやめの義妹にして、陰陽師を引く高校1年生 あねさき小鳥ことりが、そこに現れたのだった。

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