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えっ!!トリップ先は平安時代!?ウソですよね?  作者: 九条 夏夜乃
2日目
9/11

恋人がいる疑惑浮上!?


*******


「うわぁー!」


 目の前の光景に思わず感嘆が漏れます。左右どちらを見ても、露店!露店!露店!&人!人!人!


 翳る夕陽も相まってもはや、ちょっとしたお祭りみたいな感じです。イメージとしては、近所の神社とで夏とかにやる縁日みたいなのを想像してくださいね。


 私は、隣を相変わらず優雅に歩いている吉平さまを興奮気味に見上げます。


「吉平さまっ!これが、"市"って言うんですかっ?」


 吉平さまはそんな私を見て、目元を和ませながら、「そうだよ」と肯定します。


「この市が都の主要な市で、生活に必要な物は大抵この市で揃えてしまうことができるんだ。あそこから……」


 歩きながら、一つ一つの露店について丁寧に教えてくれます。この店は茶屋で団子が絶品なんだとか、あの店は櫛屋で御所の女御たちの御用達の店だとかとかとか。


 異様に女の人が好きそうなお店ばかり詳しい気がするのは、私の思い過ごしでしょうか?う〜ん。


 ………ハッ!!


 もしや、吉平さまにはもうすでに恋人がいらっしゃるのでは!?


 ちらりと吉平さまに視線を移します。何度見たって、相変わらず端麗な造りをしてますよね、吉平さまは。羨ましい限りです。


 白い肌に口紅をつけてるんじゃないかって思うくらいの唇で女の人顔負けじゃないかってぐらい色香バツグンなのに、女々しさを感じないのは、きっとその明け方の太陽を思わせる琥珀色の瞳が意思の強さを映しているから。そんなひとを、世の女の人が放っておくわけがありませんよね。私なんて、ホラ!!お色気のおの字もありませんよ!16という歳にして、このペッタン具合!おまけに、16年間で彼氏がいたことなんて一回もないし。う〜ん、なんだか泣けてきます。



 むむむ?



 と言うことは、この二人っきりで市に遊びに来ていると言う状況はひじょーにマズイ状況ではないんでしょうか、吉平さま?


 もし、その恋人にこの状況がバレてしまった場合、シュラバと言うのになってしまうのではないんでしょうか?


 あの、よくある昼ドラなんかの「私のことなんて、遊びだったのね!あなたなんて、もう知らないわ!ばちーん!!」的な展開になってしまうのでは……


 一人、悶々と考えていれば急に吉平さまに腕を引かれます。


「あぁ、そうだ。あそこの餡蜜屋が、近頃美味いと評判なんだ。これは、食べて帰らなければ、絶対に後悔するよ」


 と、そのまま餡蜜屋にずるずると連行され、私を木でできた簡素な椅子に座らせると「あんみつを二つ」と奥に向かって注文をしました。


 ほどなくして、奥から女の人があんみつを持ってきてくれます。


 白い陶器に盛られたあんみつは、私が知っているあんみつとは全然見た目は違うけど、みつ豆と寒天が入っていたので、ちゃんとしたあんみつでした。


 ……って、こんなことしてられませんよぉーー!


 なにのんきにあんみつ食べようとしてんのよ、私!!流されるな、私!!


「吉平さま!こんなことしていて大丈夫なんですか!?」


「ん?夕餉前にあんみつを食べることが、かい? 」


「あー、確かに言われてみればそうですね……ではなくて!」


 ボケてるんですか、吉平さま。


「よくわからないけど………ほら、白雪桜。口を開けて?」


 みつ豆と寒天が乗ったスプーンが目の前に差し出されます。


「………」


 勢いが削がれて思わず、じいっと目の前のスプーンを凝視しちゃいます。


 ……えっと。これは、世に言う………あーん……ですか?ですよね?そーとしか言いようがないんですが!?それって、恋人同士がやるんじゃないんですか!?


「ほら、白雪桜。早くしないと、匙から落ちちゃうよ?」


「……えっと…吉平さま?自分で食べれますから……」


 いくらなんでも、恥ずかしすぎです。周りの人の視線がいやに生温いし。公開処刑ですか。


 吉平さまも、焦れたらしく微笑みながら爆弾発言を投下。


「食べないと、口に突っ込むよ?」


「いただきます!」


 慌てて目の前のスプーンにかぷりつきます。


 口に突っ込むって言われちゃ……ねぇ?


「味はどうかな?」


「は、はい!とっても……美味しい……です」


 うわぁーん。恥ずかしすぎて、味なんてわかんないよー。絶対に今、私の顔真っ赤だ。


「あの!吉平さま。こう言うのは、その…恋人さんにやってあげたほうがいいんじゃないんですか?」


 絶対こんなことがバレたら、私の命が危ない!女の嫉妬は怖いんだぞー


 なのに、当の吉平さまは、きょとんとしています。


「……恋人?誰のだい?」


「え?……吉平さまの恋人さんですよ?」


「私には、恋人なんていないよ?」


「へっ!?」


 すっとんきょうな声が出ました。出したくなくても、出ちゃいますよ。


「え、じゃぁ、なんで茶屋とか櫛屋とか女の人が喜びそうなお店ばかりそんなに詳しいんですか?」


「あぁ、そういうことかーーーもともと市には、白雪桜と来ようと思っていたからね。予め君が好きそうな店を探しておいたんだよ。だから、店については詳しくても、恋人はいないよ」


 ーーー恋人なんていない。


 その言葉に、思わず私は安堵しました。……あれれ?なんで?


「さて。白雪桜の誤解も解けたことだし、早くあんみつを食べて帰ろうか。ぷりんも待っていることだしね」


「あ……はいっ!!」








 この時、私は気がつかなかった。



 





 悪意に満ちた視線が注がれていたことに………。







 狂いだした歯車はもう……







 ーーー止まらない。


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