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夢の話(2)
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男の人の悲痛な叫び声が、なぜか耳元から聞こえてきます。
重い瞼を上げ、目の前の男の人を見た瞬間、これは“記憶”なのだと悟ります。
根拠はありません。ただ、漠然とそう納得しました。
遠のいていく感覚の中、私は必死になって男の人に向かって腕を伸ばします。
ーーー愛しくて。
ーーー私のために泣いてくれてるこの人が、ただただ愛しくて。
最期の最期に逢えたのが、この人でよかった。
だから、自分のした行動に後悔はない。
愛しいこの人が生きてくれさえすれば。
もう一度だけ、この人の体温を感じたくて頬に触れる。
抱きしめられる体温がひどく心地よかった。
心残りは、一つだけ。
あなたに………
………“愛してる”と伝えたかった。