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えっ!!トリップ先は平安時代!?ウソですよね?  作者: 九条 夏夜乃
1日目
3/11

美形の正体は?(2)

*******


 朝食兼昼食を完食したあと、私は慣れない女房衣装に苦戦しながらも着付けを済ませ、同じ女房仲間の松枝まつがえさん(教育係とも言う)の指導のもと、自分で着る単を仕立てことになりました。


 松枝さん曰く裁縫は、習うより慣れろだそうで。


 目の前に広がっている色とりどりの反物に、思わず感嘆が漏れます!トキメキますっ!!松枝さんは奥にいると言って席を立ち、私は早速、目移りしないうちに仕立てたい色を決めて、裁縫スタート。


 初めに自分の着丈に合わせて型紙を作って、型紙通り布を裁断。裁断した布同士をまちばりで留めて………よしっ!仮止め終了。あとは、仮止めした布同士を縫い合わせて、完成です!!ここまでの所要時間、わずか60分。早いもんでしょ?


 出来上がった単を丁寧に畳んで小脇に抱えながら、松枝さんを探す。


 慣れない邸の中をうろうろしていると、ちょうど前から来た人と盛大に正面衝突をしてしまいました。転ぶーーそう覚悟してぎゅっと目をつぶると、逆に強い力で引き寄せられる。


「ーーっと、大丈夫かい?」


「は、はい。すみ………」


 すみませんーーその言葉は、最後まで言えなかった。


 なんでかって?そんなの、超美麗な吉平さまに、抱きしめられている形で支えてもらってるからに決まってるからでしょー!………と言うか、ヤバい。この密着具合は、大変ヤバい。こんなに密着してたら、私の心臓の音が聞こえちゃうよ〜。


 落ち着け心臓!落ち着くんだ、私の心臓!!


「おや?白雪桜、その持っている衣は、単かな?さっき、松枝から縫い始めたと聞いてたけど、もう仕立て終わったんだね」


「あ、はい。私、縫い物が好きで、現代にいたときも、小さいときからやっていたので、慣れているんです。なので、吉平さまもなにか繕い物かあるときは、いつでも言ってくださいね」


 縫い物は、何時間やっていても飽きない自信があります!いつでもウェルカムなのです。


「それは、なんとも頼もしい限りだね。その単を見せてごらん」


 吉平さまはそう言うと渡殿わたどのだというのにその場で単を広げて、しばらく縫い目を確認すると、ついですぐ驚きで目を見開いた。


「驚いた。初めて縫ったとは思えないくらい、整った縫い目だね」


「ほんとうですか!」


 わーい、誉められた!誉められた!


「ほんとうだよ。この分なら、君に頼みごとをしても大丈夫かな」


「頼みごと、ですか?」


「そう。女房としての初仕事。表は、二藍ふたあい。裏は、青の桔梗重ねの直衣のうしを、私に仕立ててもらえるかな?」


「え、でも、私直衣なんて、まだ縫ったことないんですけど………」


「大丈夫。単をこんなに上手く仕立てるんだから、そんな心配はないよ」


 ………うーん、それとこれは違うような気がします。


 布は、西の対屋にしのたいのやにいる松枝が持っているからと言われ、対屋の中に入ると、ちょうどほかの女房の人たちが全員集まっていました。私が入ったとたん、みなさんが一斉に振り返ります。


 ひょえええ〜。視線が突き刺さるぅ〜。見ないで!私をそんなに見ないでくださーい!


 入り口で立ち止まってしまった私を見かねてか、松枝さんが優しく微笑んで、おいでおいでをしてくれます。


 おずおずと空けられたスペースに腰をおろすと、なんだかますます肩身が狭くなった気がします!!


「どうしたの、白雪桜?単の縫い方で、わからないところでもあったのかしら?」


「い、いえ、そう言うわではないんです。単が完成したので見ていただこうと思って………」


「あらあら、そうだったの。ずいぶん早いわね」


 松枝さんはさっそく単を広げて、ざっと縫い目を確認する。あらかた確認が済むと、単をきれいに畳み直して、にっこりと「合格!!」と宣言(?)しました。


「大変、よくできています。これならもうなんでも、裁縫の仕事は頼めますね」


「ありがとうございます!………えっとあの、松枝さん、お願いがあるんです。二藍の布と青の布を少しわけてもらえませんか?」


「その布なら、このあいだ染めたからたくさんあるけど………どうして?」


「実はさっき、吉平さまに頼まれごとをさてれたんです。桔梗重ねの直衣を仕立てて欲しいって………」


 自分で言っててなんですけど、どうしてかすごく照れますね。女房としての初仕事だって言う、緊張感も勿論あるんですけど、その仕事が吉平さまに頼まれたって思うと………なんか背中がむずむずするような、こそばゆいような………こう、わぁー!!って頭を抱えたくなる感じになるんです!!


 私が自分で言った言葉に悶えているなか、なぜかまわりで話を聞いていた女房の皆さんが色めき立ちます。ただ私は、その様子を見ながら首を傾げるだけでした。


 ーーーそして、私がこのときどうして、女房の人たちが色めき立ったのかの理由ワケを知るのは、もう少しだけあとになってから。

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