〜中篇〜
〜中篇〜
千春は自警団の隠れ家であるお山に来ていた。お山の中間付近に洞窟がありその中はありの巣のような要塞になっている。その一角の扉を開くと中には4人の男女が談議を交わしていた。
「お帰り団長。」
「「お帰りなさい団長」」
「お…か…えり…なさい。団長」
千春が入ると気付いた彼らが振り返り出迎えた。
「ただいま。私の留守中は何も無かった?」
「あぁ。今の所奴らが動いた形跡はない。」
「真琴と新は?」
「見回り。団長の方は?千鶴様の用は何だったんだ。」
「…真琴と新が帰ってから話すわ。」
千春がそう告げたあと事態は一変した。
5人が話す部屋の扉が勢い良く開けられる。
─── バタン!!
「何事だ‼︎」
「申し上げます!!第一隊長と第二隊長が…がっっ…」
伝達が言い終わる前に切られ、血を吐いた。
「おい!…っ!!」
千春は伝達に近寄ろうとした瞬間殺気を感じ後ろに飛び退く。その殺気の主を見た時5人は目を疑った。
「「真琴さん!新さん⁉︎」」
「ど…どう…し…て。」
驚きからいち早く戻ったのは双子の兄妹であり第三隊長と第四隊長である雅夢と遥と第五隊長の千秋だった。
「ま…真琴。新。」
千春はやっとの思いで2人の名を呼んだ。
「お帰り団長。でも残念。直ぐにまたサヨナラだよ。」
「団長。すまねぇ負けちまった。だからあんた達を殺さなきゃなんねぇ。ふっ…ふははははっ…今ちょー気分いいんよ。」
そこには青白い肌をした白髪の2人がいた。
目は滾るように紅く…それは2人が羅刹になった証でもあった。その2人が今目の前で刀を抜き出口を塞いでいた。
「なんで…。」
「なんで…か…私も分からない。でも意思ははっきりしてる。けれど人を見ると殺したくて仕方なくなる。普段の私ならこんな衝動抑えてやるとこだけど、奴の意思が邪魔するんだ。今は最後の別れを与えてくれてんのかな。」
真琴は自嘲するように力なく言う。
「何故自害しない。」
そう告げたのは今まで黙って聞いていた副団長の春樹だった。
「しようとしたっすよ副団長。こんな外道な化け物でいたかないからな。」
「しないんじゃなく出来ないんだ。奴はそんな意思を変えてしまう。屈辱だよ。少なくとも三分の一は孤高の鬼の血を引いているというのに…。」
真琴は心底悔しそうに顔を歪ませ刀に力を入れる。その直後2人は苦しみだし刀を千春達に向ける。
「っ…くっ。もうお別れの時間は終わりみたいだ。意識が揺らいできた。」
「団長。副団長。逃げてくれ…っく…。」
「真琴!新!」
千春は叫びながら2人に向おうとするが、それを春樹が止めた。
「やめろ千春。2人の思いを無にする気か。」
「だが春樹!」
「今は引け!何か策があるはずだ。」
必死になだめる春樹の言葉に同意する様に真琴は話す。
「そうだよ…団長…。今ここで戦ってもこの砦にはあんた達しかもう居ない…。皆死んだか…羅刹に…変えられてる。立て直すのが最善だって…あんたも分かってるんじゃ…ない…のか?」
千春は真琴の言葉にハッとなり、苦しむ2人を見つめ手に込めていた力を抜いた。
「分かった。今は引こう。だが必ず助ける。」
千春はそう叫びながら、他隊長等が開けた穴から外に脱出した。