第二話 繰り返し
「キーンコーンカーンコーン」
授業終了のベルが鳴った、今日の授業はこれで全て終了だ。
教室から出ていく教師を見ながら、彼はノートを閉じた。
そして、ため息をついた。誰かが肩を叩いているのに気付いたからだ。
体育館裏と言うカツアゲには定番のスポットで恒例のユータイジメが行われていた。
「あのなぁ、お前もやだろ?殴られんの、だったら金持ってくりゃいいのよ、分かる?」
這いつくばった彼を蹴りつけながら、不良グループの一人が言った。
彼は何も答えない、ただ攻撃に耐える。いつものことだ。20分もすれば、不良達は飽きて帰っていく。
20分間の辛抱だ。大した事はない。
今日もだった。約20分で彼らは帰っていった。
「明日は持って来いよ!」
帰り際に背を向ながら言ってはいたが、多分彼らだって期待してはいない、彼らにとってはこうやって自分を毎日殴ることで十分な利益なのだ。
彼らが立ち去ったのを見て、ユータは立ち上がった。
『ユータ』この名前こそ、彼が不良達の標的になった原因だった。どうやら、彼らにはカタカナの名前が気に入らないらしい。
自分達と違う者は排除する、これが世界の考え方だと、ユータは知っていた。
パッパッと泥だらけになった制服を払い、くしゃくしゃになった髪を整えようとした、しかし、制服も髪も、手のつけようがないことを悟ると彼は歩き出した。
そしてまた1日、また1日と日は流れていく。毎日の繰り返 し
彼は少し後悔していた。
あの時、なぜ『逃亡』の道を選んでしまったのか。所詮、『人間になる』など不可能だったのだ。
戦う道を選らんだ彼らと共にすすんでいたら・・・?
彼は考えていた。昼休みの教室、彼の席は窓際なので、日差しがきつかった。 黒板には文字がズラッと並んでいる、立たされた生徒が問題に悩む、ユータの強化された頭脳にとっては見た瞬間に分かるような問題でも、一般中学生には難問らしい。
その時だった。
『ダダダダダダ』
その音と共にガラスが割れ、生徒が何人か血を流して、倒れた。
「なんなんだよっ」
不良グループの一人が叫びながら、机の下に潜った。
(分からないのか・・・?)ユータは思った。
(僕達は今、何者かに攻撃を受け、危機的状況にさらされている。敵の外見は50代、小太り、手にはマシンガン・・・)
「おい聞け!小僧ども!あっ小娘もいるか?ガッハッハ!」
手にマシンガンを持ったオヤジが叫びだした。