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原作では悪役女性短編集

私と『私』の話

掲載日:2025/12/30

 朝、目が覚めた。 まだ、夜明け前だ。 


 明かりをつけて、鏡を見ると、笑っている『私』がいたーー


 私は鏡に向かい声をかける。


 「⋯⋯なんで笑っているの?」


 ーーすると、鏡の中の『私』が満面の笑みで、答える。


 『ふふ。 すっかり慣れたね! 朝早く起きるの! おはよう!」

 「貴方のせいでね。 ⋯⋯おはよう」

 『よし! 今日もジョキング行こう!』

 

 鏡の中の『私』はガッツポーズをして、朝から元気な様だ。


 身だしなみを整えて、玄関に向かう。 すると、彼がいた。


 「お! 今日もこんなに朝早くからジョキングか?」

 「⋯⋯⋯⋯⋯」


 ーー私は喋ることが出来なかった。 彼の言葉は、私に向けられたものではないからーー 別に、彼の笑顔が眩し過ぎて声が出ない訳じゃないからね。


 その様子に見兼ねたのか、『私』が彼に声をかける。


 『湊! おはよう! そうだよ! 私、すっかり慣れたみたいでさ!』

 「そうか、まだ暗いから足元に気をつけろよ!」

 『うん! 湊の愛情のこもった朝飯を楽しみにしているね!』


 そう『私』が言うと、私達は家を飛び出すのだったーー


 

 『もう! しっかりしてよ! どうしてそんなに照れているの? 毎日一緒なんだから、会話ぐらい出来るでしょう?』

 「⋯⋯だって、湊の笑顔が尊いから⋯⋯」


 私は、湊のことを思い浮かべる。 彼は私の家の世話係として一緒に生活している。 私の家はこの土地で大切な家系だそうだ。 ーー親が、この地を離れているから、あまり認識はしていないけど。 


 『いつもそう言って! 湊と会話するの会話するのいつも私じゃん!』

 「⋯⋯別にいいでしょう。 私じゃ無理だし⋯⋯」

 『もう! そんなことでどうするの? 私がいなくなっても大丈夫なの?』

 「貴方がいなくなる? ⋯⋯そんな冗談、考えたことなかったよ」


 私の親がいない時に、私に話しかけてくれる『私』。 いつも、寂しい時に話しかけてくれる元気な声。


 一緒に色々なことをした。 『私』が『山奥の祠が気になる! 行ってみよう!』と言い出し、深夜にコッソリと祠に向かったこと。 ーー結局、見つかってしまい、その人に怒られたけどーー


 同じ年のピンク髪の彼女を、彼女の家まで送り届けたこともあった。 『私』が彼女を見て、『なんだか、また会いそうな気がする⋯⋯』と珍しく考え込んでいたけど、彼女の妹と毎日連絡をとっているから、普通に会うと思うけど? 

 

 「おはよう。 流石、姫様は今日も元気ですね」

 「美月さん。 おはようございます!」

 「もう、貴方も高校生ね。 ⋯⋯まったく、時間が過ぎるのは早いわね」


 彼女は、母の世話係だったが、『私』の説得により、今はこの土地で生活している。 『私』が言うには『美月さんはここにいるべきだよ! ⋯⋯なんとなく。 仕事が忙しくなる? ⋯⋯お母さんは、そんなに働かなくていいから! それよりも遊ぼ!』だそう。


 お母さんーーそう言えば、お母さんに電話をするように進めたのも、『私』だった。 私はあまりしたいと思わなかったが、今は私も楽しみにしている。


 いつものジョキングコースを走っていると、道脇にまるで、私達を応援するかのように、猫がいる。 毎日通っているからか、猫は私に向かいポーズを決める。


 「かわいい⋯⋯おはよう猫ちゃん」


 私は、立ち止まり猫に挨拶をする。 私が、ジョキングをする理由の一つに、この猫の存在がある。 その猫は私に懐いてくれる。 一緒に暮らそうと思った私は猫を飼いたいと湊を説得したが、断られた。


 「ニャン!」

 「ふふ」

 『⋯⋯えっと、そろそろ行こうよ⋯⋯』

 「ニャン!」

 「はう!」


 猫から、デイリーボーナスを貰った私は、渋々ジョキングを再開するのであった。

 

 「ただいま!」

 「おかえり! ことね。 ご飯の用意出来ているぞ!」

 「⋯⋯シャワーを浴びたら、すぐ行くね⋯⋯」

 「うん? 待っているね?」

 「はい⋯⋯」


 私はモジモジしながら応える。


 『うん! 悪くないよ!』

 「やっぱり無理。 恥ずかしいよ~」

 『ハア。 しょうがないな⋯⋯』


 私は食卓につく。 私がジョキングをする一番の理由、それはーー


 『今日もありがとうね! 湊! 大好き!』

 「はいはい。 俺もことねが好きだよ」

 

 そう言って、私達をまっすぐ見つめてくる湊に、私は自然と笑顔になるのであった。


 高校生になっても、続くと思っていた『私達』の暮らし。


 ーーでも、高校入学式の前日、鏡の前で制服の試着をしていた時、『私』が突然驚いた顔をして、私に告げて来た。


 『私、前世で読んだ小説の中にいる!』とーー

 

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